AI先生による個別指導の例(AERA 2017年9月11日号より)
AI先生による個別指導の例(AERA 2017年9月11日号より)

 全員が同じ黒板を見つめる授業は、わかる子には退屈。一方で置いていかれる子も出る。AI先生による究極の個別指導を取材した。

 苦手な数学を教えてくれるのは人工知能(AI)──。

 8月半ば、そう聞きつけた中高生の男女6人が東京・渋谷のビルに集まった。Z会エデュースによる、AIを活用した「数I・数A弱点補強講座」がそれだ。

 着席すると早速、1人に1台タブレットが配られた。この中に、AIを活用したアルゴリズム、つまり「AI先生」が組み込まれているらしい。

 まずは目標の設定。タブレット上に表示された「2次関数の最大・最小」や「正弦定理」「素数と素因数分解」など数十に及ぶ項目から、それぞれ、克服したいものにチェックマークを入れる。スタートボタンを押すと、それぞれの生徒の画面に最初の問題が現れた。

●何がわからないのか

 メモ紙に計算や図を書きながら、時折タブレット画面を触ったり、イヤホンを耳に当て解説の動画を見つめたり。教室は静かで、現役東大生の講師も生徒の間を歩き回っているだけだ。

「あのー、皆さん何をやってるんでしょう?」

 見ているだけではさっぱりわからないので、AIタブレット教材を開発した教育ベンチャー「atama plus(アタマ プラス)」のCEO、稲田大輔さんに尋ねた。

 稲田さんが見せてくれたのは、生徒の状況が逐一わかる講師専用のタブレット画面。

「この生徒の場合、目標は数Iの『正弦定理』をマスターすることですが、AIはその前段階である数Aの『垂直二等分線と三角形の外心・垂心』が理解できていないと分析しました。さらに、そこを理解するには中学校で学ぶ『三平方の定理』の復習から始める必要があると判断し、演習問題を出しています」

 普通なら、教科書や参考書で「正弦定理」の説明をもう一度読む→演習問題に取り組む、という指導を繰り返すところだろう。しかし問題が解けない原因は人それぞれ。AIが得意なのは、まさにそこだ。

「何がわかっていないからわからないのか」を解析し、必要な学習を必要な分量だけ提示するので、習得時間が大幅に短縮できるという。

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