労働市場は、総じて売り手市場化しつつある。売り手市場なら、売り手側がハッピーになるはずだ。だが、労働者という名の売り手たちは、多くの場合においてハッピーじゃない。ハッピーじゃないどころか、過労死で命を失ったりしている。幸福感なき雇用拡大だ。
21世紀の労働は、なぜ、その価値が上がらないのか。なぜ、幸せになることができないのか。このように列記してみれば、二つの問題の因果関係は明らかだ。価値が上がらないから幸せになれない。そういうことになる。
21世紀の労働は、なぜその価値が上がらないのか。それは、21世紀の資本が、本来は21世紀の労働に帰属すべき価値を吸い取ってしまうからなのだと思う。21世紀型搾取の構図だ。
この21世紀型搾取の構図の中に、近頃流行りの「シェアリング・エコノミー」や「柔軟で多様な働き方」や「高度プロフェッショナル制度」などが、不気味なだまし絵のようにはめ込まれている。そのように見えてきた。21世紀の労働が、危うい。
※AERA 2017年7月24日号