「まず私の平日のランチ代が浮きました。定年後は自宅にいることが多くなりましたが、外食やお総菜などを買うのは控えて自炊を心がけています。近所に野菜の直販所があり安くて新鮮な食材が手に入りやすいというメリットはあっても、大事なのは私も率先して家事を行っていること。妻が仕事で出かけるときなどは、お弁当を作って持たせる時もあります」

●そんなに金かからない

 大江さんと同じく定年退職した同僚の中には、現役時代の延長で毎晩飲み歩いたり、ゴルフに出かけたり、家での・粗大ごみ扱い・を避けるあまり、お金のかかる趣味に興じて、散財しているケースもよく見かけるという。また、妻の側も退職金など大金を手にすると友達とひんぱんに出かけ、ブランド品など衝動買いに走ることもある。

 将来介護が必要になった時のために「いくらとっておこう」など、夫婦間で使い道について話し合うことが大切だ。

 ちなみに大江さんの趣味は今の仕事と、時間がある時は本を読んだり、映画のDVDを観たり、ほとんどお金がかからない。そして、規則正しく早寝早起き、1日の睡眠時間も十分取っているので、薬代や医療費もかからない、健康的な生活を維持しているそうだ。

「退職したときには預貯金は150万円しかありませんでしたが、定年後実際に生活してみると、そんなにお金はかからない、というのが実感です。年金収入が期待したほどなければその分夫婦でアルバイトをすればいいので大丈夫。それよりも、不安のあまりいろんな投資に手を出して失敗したり、体調不良に陥ることのほうがマイナスです」

 定年後のさまざまな不安を払拭することが、老後生活を安定させる第一歩といえる。(ライター・村田くみ)

AERA 2017年5月15日号