おおまかな月間生活費の出し方(AERA 2017年5月15日号より)
おおまかな月間生活費の出し方(AERA 2017年5月15日号より)

 いい言葉を聞いたことがない。「少子高齢化」「福祉の縮小」「年金消滅」……。私たちの老後は本当に真っ暗なのか。このまま、ひたすら下流老人化を恐れる人生でいいのか。どこかに突破口はあるはずだ。「年を取るのは怖いですか?」――AERA5月15日号は老後の不安に向き合う現場を総力取材。

 いたずらに「お金がない」と不安になる必要はない。問題は収入と支出を把握できているか。ただし、現役時代のままの暮らしぶりは要注意だ。

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 定年後、老後資金が足りないからといって、なけなしの退職金を投資して失敗した、という話をよく耳にするが、「退職時に3千万円持っていなくても老後は安心して生活できますよ」と語るのは、『定年男子 定年女子』(日経BP社)の共著者で経済コラムニストの大江英樹さん。

「生命保険文化センターによりますと、夫婦二人がゆとりある老後を送るために必要な資金は月約35万円としています。夫婦が65歳から25年間生きると1億500万円になり、これが『老後資金は1億円必要』という話の根拠になっています。しかし、月の支出をダウンサイジングして、公的年金などの収入を差し引けば、月々必要な額は3万~8万円程度で済むはずです」(大江さん、以下同)

 仮に生活費の不足分が月3万円程度で済めば、夫婦二人が90歳まで25年間生きた時にかかる費用は900万円。そのくらいであれば退職金で十分まかなえる。年金収入の範囲で支出が抑えられれば、退職金は介護が必要になったときのために、そのままとっておくことができる。

●貯金150万円でも

 つまり、退職金や年金がいくらもらえるのかわからない、それ以前に月々の支出もわからない。どれだけ貯金があるのかもわからないという、三つの“わからない”が老後を不安にさせるもとという。大江さん自身、経済コラムニストとして独立する前は、大手証券会社で60歳定年まで勤務していたが、退職前、貯金が150万円しかないことに気がついた。

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