規制委も当初はネットで公開されていたことに気づかなかったフシがあるが、2年前にこのページを削除した。事故直後は大量の情報が公開されたが、後から精査すると、政府側にとっては好ましくない資料も多く含まれていたということか。そこで規制委に対して「保安院は記者会見でこの文書を配り、ホームページでも公開していたが、それでも規制委は黒塗りにするのか」と尋ねてみると、こんな回答が返ってきた。

「当庁において改めて検討した結果、当該文書は情報公開法上の不開示情報を含むものと考えております」(規制委の事務局・原子力規制庁の高橋正史法務調査室長)

 保安院よりも情報開示が大幅に後退したのか。念押しすると、答えはこうだ。

「保安院と規制委は別の組織なので、新しく別の判断をした」

●国の責任裏付ける事実

 原発事故をめぐっては、東電や国に対して損害賠償を求める集団訴訟が札幌から福岡まで、のべ約30件起こされており、原告は約1万2千人にものぼる。3月17日には、集団訴訟として初の判決が前橋地方裁判所であり、判決では津波を予見して事故を防ぐことができたと認定。東電と国が引き起こした人災だと断じた。東電に対する規制権限の行使を怠ったとして、国にも東電と同じだけの責任を認めているのだ。

 墨塗り文書には、国の責任を裏付ける事実がいくつも含まれ、国にはいかにも都合の悪いものと言わざるを得ない。

 例えば、新指針によって全国の老朽原発の安全性を確かめるため実施された「バックチェック」。当初09年に完了予定のはずが、福島第一原発に関しては16年まで先延ばしされ、津波の再検討も先送り。これが事故原因にもなった。黒塗りされた文書には、指針改訂後に予想される訴訟について「(国や電力会社は)少なくともバックチェック等の特段の立証活動なしには敗訴を到底免れない」などとある。その立証をサボって事故を起こしたのだから、裁判で負けて当然だったのだ。
「ほかに持ってない」

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