北朝鮮・元山の日本海沿岸にずらりと並んだ軍の火砲。トランプ大統領の「レッドライン」を越えないよう、考えた示威行動のように見える(写真:北朝鮮・労働新聞電子版)
北朝鮮・元山の日本海沿岸にずらりと並んだ軍の火砲。トランプ大統領の「レッドライン」を越えないよう、考えた示威行動のように見える(写真:北朝鮮・労働新聞電子版)

 米国の空母、ミサイル潜水艦に、北朝鮮は長距離砲演習などで応酬。チキンレースが本格化した。双方の指導者は戦争の瀬戸際で巧みな妥協ができる人物なのか。

 米原子力空母「カールビンソン」(9万3千トン、60機搭載)が4月29日、日本海に入った。同月25日には巡航ミサイル「トマホーク」154発を搭載できる原子力潜水艦「ミシガン」も釜山(プサン)に入港した。

 一方、北朝鮮軍は25日、元山(ウォンサン)付近の日本海沿岸で多連装ロケット砲、長距離砲計300門以上による射撃演習を行い、南北境界線沿いの地下陣地からソウルを砲撃する能力を誇示。29日には対艦ミサイルらしいものを発射し失敗したが、チキンレースは本格化した。

●北朝鮮攻撃に米は慎重

 もし米軍が北朝鮮を攻撃すれば1953年の朝鮮戦争休戦協定は破棄され、全面的な戦争再開となる。米国は94年にも北朝鮮の原子炉などに対する「外科手術的攻撃」を計画した。だが在韓米軍司令部は「最初の90日の死傷者は米軍5.2万人、韓国軍49万人、民間人の死者は100万人以上」との損害見積もりを提出。ワシントンの高官たちは驚いて攻撃をあきらめた。

 今日の状況は当時より厳しい。原子炉などは大型の固定目標だから、攻撃は容易だったが、核弾頭になると位置が分からない。本誌3月20日号で述べたように、時速2万8千キロで周回する偵察衛星は1日約1回、1分程で北朝鮮上空を通過するから、移動式弾道ミサイルの位置も不明確だ。一部のミサイルを破壊できたとしても、すべてを処理するのは不可能で相手は残ったミサイルを発射する公算が大だ。

 南北境界線の北側は朝鮮半島を横断して全長240キロ、奥行き30キロもの地下要塞(ようさい)地帯だ。朝鮮戦争中に中国軍が造り、米軍の猛砲、爆撃に耐えた。そこに北朝鮮はソウルに届く射程60キロの240ミリ、22連装の車載ロケット砲や、170ミリ長距離砲など計2500門を配備。ソウル前面だけでも300門以上と見られ、戦争となれば韓国人口の3分の1が住む首都圏は大きな被害を受けそうだ。

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