たとえば冷蔵庫だ。「真空チルド」(日立)、「メガフリーザー」(シャープ)など、パンチの効いたネーミングで機能を紹介し、消費者のハートをがっちりつかんでいる他社。一方、東芝はそこがヘタ。ひいては、「ヘルシーのシャープ」「デザインのソニー」など、家電メーカーとしての特徴も消費者に根付いていない。

「でも冷蔵庫でいえば、実は今も、野菜室を真ん中に置いた機種を作っているのは、ほぼ東芝だけ。使ってみると一部の人にアピールできる、細かい使い勝手のよさがたくさんあるんですけどね」

 そう話す安蔵さんに、せっかくなので、愛用する東芝製品を聞いてみた。生活家電とは別に、現在も東芝が手がけているBDレコーダーだという。

「地上波を24時間全チャンネル録画できる『全録』機能を初めて打ち出したのが東芝で、マスコミ業界にはとくに東芝のDVDレコーダーやBDレコーダーの愛用者が多い。東芝には『録画神』と呼ばれる有名な開発者がいて、タイムシフトの文化を作ったと言われています」

●夢の機械・ワープロ

 デジタル時代になると、東芝ブランドを意識するユーザーも増えてくる。例えば、東芝が日本で初めて製品化したパーソナルワープロ。それまで専門家に和文タイプライターなどでやってもらっていた文章の活字化が自分の手元でできてしまう、昭和の夢の機械だった。

 1985年から発売された東芝のワープロ「ルポ」シリーズのユーザーだったコピーライターの女性(56)が言う。

「上司が持っていた初期の高価なワープロは、液晶に表示されるのが、たった4文字(笑)。それが、あっという間に1行になり、2行になり、値段もどんどん安くなった。ルポはそんなワープロ黎明(れいめい)期の信頼のブランドで、値段も手頃。フロッピーディスクへの保存など、新しい機能がいち早く搭載されたのもよかったですね」

 最後にもうひとつ。多くの事業を手放した東芝が、今後主力事業として注力すると表明しているのが、鉄道システムなどの社会インフラ。そういえば鉄道ファン以外にはあまり知られていない東芝のロングセラー商品のひとつに、鉄道などの車体やその部品というのがある。

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