そもそもHMD装着の不快感が前提なので、現状のVRゲームは短時間プレー向けに作られているようだ。

 オンラインゲームと比べてVRゲームは高い没入感が特徴だ。だが、「そもそもゲームにハマる要因は、ゲームの達成感という報酬とコミュニケーションが大きい。単に没入感によるわけではないのでは?」と簗瀬さんは話す。

 一方、小型で軽量のHMDなどでVR体験ができる、より使いやすい機器が登場すれば、また別の問題が出てくるのではないかと、鳴海さんは指摘をする。

「思ったことが何でもかなうとして、『VRは欲望のスポンジ』と言われています。現実よりもVR世界のほうが快適だとなったら、そこから出てきたくなくなってしまうのではないでしょうか」

 ただ、VR技術がそこまで進んだ未来には、社会経済システムが現実世界のほかにVR世界で実現し「VR依存」は問題ではなくなっているのかもしれない。ゲーム研究者で関西大学特任准教授の井上明人さんはこう予想する。

「HMDが使いやすくなったらVR依存もありうるでしょうが、その頃にはVRの中で稼いだり社会生活ができたりするといった経済圏ができてくる可能性もあります。そうすれば、一日中VRゲームをやっていたとしても、依存というのは問題にならなくなるのではないでしょうか」

(編集部・長倉克枝)

AERA 2017年1月30日号