自宅から徒歩5分以内のところに2園が新設されるのだが、周辺はマンション建設ラッシュで子育て世代が続々流入していて焼け石に水。世帯年収で不利になるであろうことに、不満を感じているという。

「長年、キャリアアップを目指して頑張ってきたのに、保育園入園の審査では不利になる。これじゃ、いつまでたっても女性管理職は増えませんよね」

 夫と妻の年収比率が8対2の世帯と5対5の世帯を比べて、前者のほうが少しでも世帯年収が低ければ優先されるというのもおかしな話だ、とこの女性は主張する。保育園に入れず妻が仕事復帰できなかった場合の世帯年収へのダメージは、後者のほうが大きいからだ。

 目黒区在住のフリー編集者の女性(44)は、長女(11カ月)を港区の認証保育園に通わせながら、4月の認可保育園入園を希望している。彼女の場合、ネックは「自営業」であることだ。自営業の場合、フルタイムで働いていても、会社員と同等の就労条件だと認められにくい。そもそも目黒区では、居宅内労働は、居宅外労働よりも基準点が低く設定されている。

「在宅で子どもを見ながら仕事なんて、無理。電話している横で赤ちゃんが泣いたら相手に迷惑ですし、取材しながら授乳するわけにもいきません。子どもの世話をしたことがない人が考えた点数設定としか思えません」

●不満の声は必ず上がる

 その月の労働時間と収入が必ずしも連動しないため、「本当に仕事をしているのかどうか」も証明する必要がある。

 就労状況を報告する書類には、1週間分のスケジュールを書かなければいけないのだが、女性はそれに加えて、実際に作っていた制作物と銀行の通帳のコピーも添付した。結局、外勤が多いということでフルタイム会社員と同等の点数がつくことになったが、会社が発行する就労証明を1枚出しさえすれば簡単に認めてもらえる会社員は、恵まれていると感じてしまう。

 自治体によってさまざまなポイントや基準が設定されている保活。公平な点数設定を目指しても、不満の声は必ず上がる。保育園の絶対数が足りない限り、戦略的に動いて加点を得ようとする人と、競争が過熱しすぎないようにと加点設定を変える自治体のいたちごっこは続く。

 この無意味な闘いは、いつまで続くのだろうか。(ライター・今井明子、編集部・金城珠代)

AERA 2017年1月30日号