東京都世田谷区ではこういった指摘を受けて、「世田谷区子ども・子育て会議」できょうだい加点の見直しについて議論している。これをなくせば、複数の子どもを持つ親や持ちたい親からは間違いなく悲鳴が上がるだろう。加点をなくすのか、加点はしても低い点数にするのか、はたまた上の子どもと同じ園を希望する場合だけきょうだい加点がつくようにするのか。どのような措置にするかは、慎重に議論されているようだ。

●設定はどんどん細かく

 前出の普光院さんによると、加点基準の設定は細かくなる傾向にあるという。横浜市では、「ひとり親世帯等で65歳未満の同居親族がいない場合はプラス3点」「ひとり親世帯等で65歳未満の同居親族がいる場合はプラス1点」などとなっている。こうした細分化は、さまざまな声を反映した結果なのだろう。

 川崎市に住む女性(32)は、

「加点があっても、自宅近くの園には入れないかもしれない」

 と話す。第1子である長男(4カ月)の認可保育園入園を希望しているが、駅前に住んでいるため、自宅近くの園は軒並み人気が高い。9月生まれの長男は、入園申請締め切りの11月中旬までに認可外保育施設に預けることも難しく、認可外加点を取りにいくこともできない。頼みは、夫の単身赴任に伴う加点だ。それでも子だくさん世帯にはかなわない。川崎市では同点のときの優先項目に、「養育している子どもが3人以上の世帯」があるからだ。

 川崎市こども未来局子育て推進部保育課にこの項目ができたいきさつを聞くと、従来、優先項目は世帯年収だけだったが、「収入だけで入所を判断しないでほしい」という市民からの意見を受けて、横浜市や東京都といった近隣他都市の利用調整基準を参考にし、16年4月入園の申請から加えたのだという。

●キャリアアップは不利

 世田谷区で長男(4カ月)の入園を申請中の会社員女性(33)も肩を落とす。

「0歳の4月での第1希望の園への申し込み人数が、世田谷区全体で去年より約100人も増えていました。3年前、結婚を機にマンションを買ったときには、営業マンに『世田谷区は保育園を増やしているから、3年後には待機児童は解消されますよ』と言われたのに……」

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