中田考(なかた・こう、56)/イスラム法学者。1960年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。著書に『イスラームの論理』など(撮影/編集部・野村昌二)
中田考(なかた・こう、56)/イスラム法学者。1960年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。著書に『イスラームの論理』など(撮影/編集部・野村昌二)

 2016年の新語・流行語大賞は「神ってる」。“聖地巡礼”“パワースポット”がにぎわいを見せ、神様が身近にあふれる。3・11から6年、一人ひとりがそれぞれの形で宗教と向き合う時代。日本の宗教にいま、何が起きているのか。AERA 1月16日号では「宗教と日本人」を大特集。現代の宗教最前線を、イスラム法学者の中田考さんに聞いた。

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 神を信じる。預言者を信じる。来世を信じる。イスラムの教えは、基本的にこの三つです。

 神とはアラー。預言者とはムハンマドという神のメッセージを伝えた人。そして来世は、イスラム信仰の根幹をなすものです。イスラム教には仏教的な信仰と違い、輪廻はありません。一回限りの生を生き、死ぬと最後の審判の日に復活して生き返り、来世である天国か地獄に行くのです。来世は永遠に続きます。ですから一言でいうと、イスラム教徒にとってこの世のことはどうでもいい。東日本大震災で何万人も亡くなったとか、貧困や格差が広がっていると聞いても、何の関心もありません。

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