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神主は食べていけない 末端神主たちの神社本庁への嘆き

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小川寛大AERA

明治神宮の森に面して立つ神社本庁。神社をイメージした建物は、山手線からも見える(撮影/写真部・小原雄輝)

明治神宮の森に面して立つ神社本庁。神社をイメージした建物は、山手線からも見える(撮影/写真部・小原雄輝)

 2016年の新語・流行語大賞は「神ってる」。“聖地巡礼”“パワースポット”がにぎわいを見せ、神様が身近にあふれる。3・11から6年、一人ひとりがそれぞれの形で宗教と向き合う時代。日本の宗教にいま、何が起きているのか。AERA 1月16日号では「宗教と日本人」を大特集。

 参拝した神社で目にする改憲賛同への署名集め。地域の繁栄を祈願し、祭事を担ってきた神社が今、政治運動色を強めている。それをつかさどるのは、神社本庁。日本会議とも連携する神社本庁の実態とは──。

*  *  *
「もうすぐ震災から6年ですが、うちの復興はまだまだです」

 東北地方のある神社の宮司は疲れ果てた様子でこう話す。

 神主の家系に生まれた彼は、現在では三つの神社の宮司を兼ねる。しかし神職としての収入は、年間数十万円程度。平日は地元企業の社員であり、「収入面でいえば、神主は趣味みたいなもの」と自嘲気味に語る。

 2011年の東日本大震災では世話をしている神社がすべて損壊。修理費用で多額の負担が重くのしかかる。

「震災以降の神社運営は、完全に会社員としての給料からの持ち出しです」

 彼は決して特殊なケースではない。震災被害という事情を除けば、むしろ全国の神主の平均的な姿であるといえる。

 神社が手がける地鎮祭や自動車のお祓(はら)い、結婚式といった儀礼の初穂料は、数万円程度が相場。参拝客の投げる賽銭(さいせん)やお守りなどの“売り上げ”が見込めるのは、観光地にもなっている一部の大神社に限られる。神社界には神主のことを「くわん主(=食わん主)」と呼ぶ隠語まであり、基本的に“食べていける職業”ではないのだ。

●金満神社のサロン

 統計上もそれは明らかだ。文化庁が発行する『宗教年鑑』2015年版によると、浄土真宗本願寺派は寺院数1万206に対し教師(聖職者)の数1万9510人。曹洞宗は寺院数1万4559に対し教師は1万6029人。一つの寺に僧侶が1人以上はいることになる。

 ところが、全国の神社を束ねる神社本庁の数字を見ると、神社数こそ7万8969と膨大だが、教師は2万1698人しかいない。3・6社に1人の割合でしか神主がいない計算だ。複数の神社の宮司を掛け持ちしても、生活していく収入が足りず会社員などを兼業している。


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