神道は天皇を祭祀王としていただく教義体系から、その姿勢は明確に保守、右派である。実際、神社本庁の事実上の機関紙である「神社新報」には「参院選を終へ 斯界の理想を胸に改憲へ総力」(16年7月25日付)、「安全保障関連法の成立 次は本格的に九条の改正を」(15年9月28日付)など、安倍政権の政策に賛同し、憲法改正を求める論説記事がそこかしこに掲載されている。それをもって、「神社界は安倍政権の応援団」などの声が上がる。

●集票力は新宗教以下?

 ただ、宗教に限らず、あらゆる団体は自由な政治的意見を表明する権利を持つ。だから「宗教と政治」を考えるときには、その宗教が「どういう政治的主張をしているのか」ではなく、「政界に対してどれほどの影響力を持っているか」に重きを置くべきだ。その具体的な力を測る最も有効なバロメーターは選挙だろう。

 神社本庁の関係団体「神道政治連盟」は、神社界の立場から改憲や靖国問題などに関する保守的な政治運動をしている。同連盟は参院選のたびに比例区で推薦候補を1人立てる。現在その推薦を受けているのは自民党の山谷えり子と有村治子である。山谷は16年の参院選で約25万票、有村は13年の参院選で約19万票を集め、当選した。しかしこの票数は、16年参院選で全国から約757万の比例票を集めた公明党に比べれば、あまりにお粗末な数字だ。同じ選挙で立正佼成会が民進党の白眞勲と藤末健三に推薦を出し、2人合わせて約28万票をとって当選したが、山谷、有村の得票数はこれにも劣る。

●対立するのは無意味

 安倍政権への影響力もどこまであるか疑わしい。神社本庁は「総理大臣は靖国神社に参拝すべきだ」と一貫して主張してきたが、安倍晋三首相は第1次政権時代には靖国参拝を行わず、第2次政権発足以降も13年12月26日の一度しか参拝をしていない。神道の祭祀には米が重要な供え物として使われる。神社本庁は日本の農業への保護的な政策を政界に求め、TPPにも懐疑的だった。しかし安倍首相は、あっさりとTPP交渉への参加を表明した。東京都内にある有名神社の氏子組織幹部は、こう話す。

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