原爆から震災まで…現代美術家・柳幸典の「歴史を問うアート」 (2/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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原爆から震災まで…現代美術家・柳幸典の「歴史を問うアート」

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桑原和久AERA
原爆から震災まで、日本の現代史をテーマにし、アートがもつ批評精神を追求している。(※イメージ)

原爆から震災まで、日本の現代史をテーマにし、アートがもつ批評精神を追求している。(※イメージ)

 今回の個展のために制作された新作「プロジェクト ゴジラ─眼のある風景」は、震災を連想させる廃棄物の上に巨大な目玉が輝く。目玉には、原爆や三島由紀夫の演説の動画が投影される。

「唯一の被爆国が、アメリカから押しつけられた原子力政策を推進した。ゴジラは戦争で膨大な死者を生み出した太平洋から出現する。この目玉はその人々の怨念を表象している」

 柳は1980年代、日本で若手のホープとしてデビューを果たすと、90年代にはアメリカに拠点を移し、今回の個展でも呼び物となっている万国旗の砂絵を蟻が壊していく作品「ザ・ワールドフラッグ・アント・ファーム」で名声を築く。これまで、事物を見る視点を、通常とは異なるレイヤーに移動させることで、人工的な権威を問い直す作品を数多く発表してきた。
●自ら求めて創るもの

「アートは、建築やデザインと違い注文を受けて創るものではない。自ら求めて創るものだ。だからこそ唯一、社会批評精神を持つことができると思う」

 2000年代になると突如アメリカから姿を消し、日本で犬島でのプロジェクトに没頭する。現在は同じく瀬戸内海の百島を拠点に活動する。この間、大学准教授に就任するがほどなくその職を辞す。「ワンダリング・ポジション(さまよえる位置)」とは柳自身のようだ。

「アートが批評精神を保つには、常に視点を移動させる必要がある。一箇所に留まると、アートが手段となり目的を見失ってしまう」(柳)(文中敬称略)

(ライター・桑原和久)

AERA 2016年12月19日号


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