金融依存を脱し、実体経済に軸足を置き、自動車に代わる新たなモノづくりのサイクルを築くときだと考えるべきなのです。

 具体的にはMRJ(三菱航空機の国産ジェット旅客機)のようなプロジェクトを、日本政府が総力を挙げて支援していくべきでしょう。

●実体経済重視へ

 ただし、モノづくりだけで日本をこれ以上豊かにすることはできません。日本の勤労者の可処分所得は97年をピークに、2015年までに年間84万円も低下している。この可処分所得が落ち込んだのは、産業間の就業人口移動が進んだためです。この15年間でモノづくり産業は439万人の雇用を減らしましたが、その一方で広義のサービス産業の雇用は583万人増えました。

 しかし、給与は建設業や製造業に比べて低いのが現状です。年収にして90万円以上の開きです。このサービス産業の高付加価値化が必須と考えます。その一例として観光産業の育成が挙げられます。IR(統合型リゾート)の構築に、IT革命の成果を生かした産業ツーリズム、医療ツーリズムの拡大成長を実現できれば、単に雇用の増加をもたらすだけでなく、サービス業従事者の給与水準を引き上げることも可能です。

 また、今後は第1次産業の成長も不可欠と考えます。日本はカロリーベースで食料自給率は39%という低水準。15年の食料品の輸入額は7兆円に達しているのに対し、食品・食材の輸出額は7千億円。食だけで6兆円以上の輸入超過にあることを考えれば、第1次産業重視がもたらす効用は大きい。

 金融主導経済から実体経済重視へ。トランプ政権誕生は、その好機と考えるべきです。(構成/ジャーナリスト・田茂井治)

AERA 2016年11月21日号