、日本では医師の処方が必要な「強い」薬が、アメリカではドラッグストアでも売られている…(※イメージ)
、日本では医師の処方が必要な「強い」薬が、アメリカではドラッグストアでも売られている…(※イメージ)

 風邪薬、下痢止め、咳止め、酔い止め、鎮痛剤……。ドラッグストアでさまざまな薬を手軽に入手できる点はアメリカも日本も同じだが、決定的に異なるのは、日本では医師の処方が必要な「強い」薬が、アメリカではドラッグストアでも売られているところだろう。

「赴任したとき、日本では医師が処方しなければならない胃潰瘍薬、『プロトンポンプ阻害薬』がドラッグストアに並んでいたことに驚きました」

 と、アメリカのマサチューセッツ州ボストン在住の医師、大西睦子さんは言う。

 米国では、病気などの初期症状が出たとき、ファーストステップとして、病院に行くより、市販薬に頼るケースが一般的だ。

 2015年度の米国消費者ヘルスケア製品協会の報告によれば、米国の市販薬市場は400億ドル、平均的な家庭は年間に約338ドルを市販薬に使っていることになるという。

「8割以上の成人は、軽い病状が現れた場合、まず市販薬に頼りますし、深夜に子どもに症状が出た場合も、7割近い親が市販薬を与えているというデータがあります。医療費が高額になりがちな米国では、市販薬は、手ごろな価格でアクセス可能な、貴重な医療手段なのです。市販薬がないと、軽い症状でも、高額な医療に依存しなければなりません」

 市販薬は医療費の削減という意味でも効果的だ。医療機関を受診すれば6~7ドルかかるが、市販薬では1ドルで済むとされる。医療費を770億ドル、薬のコストを250億ドル削減しているという。セルフメディケーションが成功しているように見える米国だが、消費者リテラシーはやはり高いのか。

「副作用や他剤との飲みあわせなどの諸注意は、『ドラッグファクト』としてパッケージに大書きされ、メディアで定期的に周知されているので、理解は進んでいると思います。市販薬のポーションは大きく、数百錠単位で売られているものもあります。子どもが大量に誤飲してしまえば大事ですから、保存場所にも気を配るのが常識です」

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