●同室の8人まで検知

 人それぞれに快適な温度を提供する機能は、一触即発の夫婦にとっての救世主にもなりそう。いったい、どういう仕組みになっているのか。前述のCMのエアコン「WXシリーズ」をつくったパナソニックに聞いた。

「技術をわかりやすく説明したCM効果もあって、今年はとくに売り上げ好調です」

 顔をほころばせるアプライアンス商品部・宮代達さんによれば、センサーは大きく二つ。

「一つはエアコンの目にあたる『ひと・ものセンサー』です。まずこれが部屋の人の動きなどをキャッチ。次に赤外線カメラを搭載した『温冷感センサー』が、暑く感じているか、寒く感じているのかを計算して、各人が快適になる気流を送ります」

 室内の人の体温から気流などを自動的に変える機能はすでに各社が実用化しているなか、「温冷感センサー」がパナソニック2016年モデルの売り。人の体の表面温度だけでなく周囲の温度も測ることで、その人がどう感じているのかをより詳細に解析。体感に近い「暑い」「寒い」がわかるようになった。

 こうしてエアコンが人それぞれの感覚を認識して、風を強めたり、弱めたり。同室の8人まで検知できるそうだ。では、毛皮を着ているペットとか、ロボット掃除機は?

「物体の形や表面の温度などから、人とそうでないものを判別。まれに大型犬などは人と認識されることもあるかもしれませんが、ロボット掃除機はありえません」(宮代さん)

 試しに同社のプレスルームに設置してある温冷感センサー搭載エアコンに、私の検知をお願いすることにした。まず、そこらを10分ほどジョギングしたのち、コンビニでカップラーメンを買ってその場で完食。プレスルームに戻って、息切れしながら、エアコンの近くに座ってみる。カモーン!

「しっかり認識するといいのですが、ビルの空調もあるのでどうでしょう」

 そう言う宮代さんの心配もよそに、30秒ほどすると二つのセンサーが、赤外線カメラに(たぶん)真っ赤に映っている自分を発見。一気に涼しい風を送ってきた。たとえ相手がエアコンでも、気持ちを認めてもらえるっていい気分。うちの夫、聞いてます?(ライター・福光恵)

AERA 2016年8月1日号