「しっかり向き合って」

 14年2月の参院予算委員会では、「危険な行為には先んじて対策を打つことが必要だ」などと述べ、辺野古の反対運動を事前に抑え込むべきだと政府に対応強化を求める一幕もあった。

 島尻氏はこうした「実績」が評価され、昨年10月の第3次安倍政権の内閣改造で沖縄北方担当相に就任した。

 衆参の沖縄選挙区選挙では09年以降、辺野古容認を打ち出す候補者の当選は皆無だ。地元の民意よりも、政権に取り入ることを優先した島尻氏への風圧が強まるのは必然だった。

 参院選から一夜明けた11日早朝、政府は「伊波勝利」の余韻に浸る沖縄社会に冷や水を浴びせた。

 沖縄防衛局が沖縄本島北部にある米海兵隊北部訓練場のヘリコプター着陸帯建設のため、資機材を基地内に搬入したのだ。地元住民らの根強い反対で停滞している懸案の工事である。

 翁長知事は同日夜、記者会見し「用意周到にこの日を待っていたというのが見え見えで、到底容認できない」と批判した。

 沖縄以外の地域ではほとんど報じられていないこうした動きを捉え、

「翁長知事が反発するのは当然」

 と語るのは東京大学大学院教授で哲学者の高橋哲哉氏だ。

 米軍属事件に抗議する6月19日の県民大会。登壇した大学生の玉城愛さんは「安倍晋三さん、日本本土にお住まいの皆さん。今回の事件の第二の加害者は誰ですか? あなたたちです。しっかり沖縄に向き合っていただけませんか」と訴えた。高橋氏はこの場面を心に刻み、こう確信した。

「本土のわれわれからすると非常にきつい言葉ですが、沖縄の人々の感覚からすれば、やはりこの言葉が当を得ているんだと思います」

●本土の有権者の責任

 基地問題に関する政府対応に、沖縄の人々が怒りをあらわにする状況が重ねて報じられる中でなお、安倍政権を選挙で大勝させる。その当事者はほかでもない、本土の有権者だ。高橋氏はきっぱり言う。

「これまで沖縄に基地を集中させる政治体制を支えてきた責任は、本土の有権者の側にあるのです」

 今回の参院選で、現政権に異議を申し立てる民意を示したのは沖縄だけではない。

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