NPO法人「HopeTree」は、親が子どもに病状を伝えるときに役立つ絵本の紹介などに力を入れる。代表で、東京共済病院がん相談支援センターの大沢かおりさん(49)は、「母親は自分を責めてしまいがち」と指摘する。海老蔵さんも会見で麻央さんの心中を、

「子どもの傍らにいてやれないことが申し訳ないという気持ちが強いんじゃないか」

 と語っていた。

「親は闘病を通して、子どもに、人生で困ったときに誰かに相談すること、頼ること、困難への対処法を伝えている。子どもの力を信じて」(大沢さん)

 北里大学看護学部の小島ひで子教授によると、医療関係者の間でも「家族は第二の患者」との意識が高まっているという。専門家を交えて子どもへの病状説明について話し合い、患者のQOLや治療への意欲を高めようという動きもある。

「子どもが大丈夫だと言っても、お絵かきでお母さんを鬼のような顔で表現したり、字に伸びやかさがなくなったり、サインはある。パートナーも余裕がない場合、第三者の関わりが必要でしょう」(小島教授)

●夫のケアが盲点

 一方、家族のケアで盲点になりがちなのは夫だ。前出の乳がん経験女性は、

「主人は弱音を吐く相手がいないし、できることは限られていた。精神的にきつかったと思います」

 と振り返る。

「夫は妻のケア、子どものケア、そして自分のケアも必要になります。男の人は特に、他人からのケアを受けたがりませんが、ストレスは奥様と同じかそれ以上です」(大西教授)

 患者本人も家族もケアする仕組みが必要だ。(編集部・作田裕史、鎌田倫子)

AERA  2016年6月20日号