「長女は(会見の様子を見て)ちゃんとわかると思います。せがれはどうか……」

 専門家によると、子どもの発達段階に応じて説明するのが望ましく、「よく理解できないから」「子どもにショックを与えないため」とただ隠したり、嘘をついたりするのは信頼関係を損ねるという。埼玉医科大学国際医療センター精神腫瘍科の大西秀樹教授は指摘する。

「子どもも家族の一員です。誠実に対応すること。ないがしろにすると子どもは自分が悪いからだと思ってしまう」
 子どもはいつもと様子が違うことを感じ取り、不安を抱いている。その時「あなたのせいではない」と話すことが重要だ。

 4年前に乳がんを発症して右乳房を全摘した会社員の女性(54)は、診断後すぐに2人の娘に説明した。当時、長女は小学4年、次女は幼稚園の年長。

「お風呂に入ったときにおっぱいがなかったり、抗がん剤の治療で髪の毛がなくなったりしたらバレちゃう。『お母さんはがんだ』とはっきり伝えました」

 長女はがんという言葉を知っていて、次女も母親の口ぶりや姉の反応から察した様子だった。同時に女性は「生きるために切る」とも伝えた。

「隠し通せないのなら、本当のことを言わないのは不安に陥れるだけ。それよりゴールを子どもたちに与えたかった」

 子どもたちはきちんと母親の病状を受け止め、手術前には、切除する右の乳房にマジックで「ありがとう」と書いたという。

「このとき、死ねないと思った。術後の化学療法もきつかったのですが乗り切れました」

 がん闘病中の子育て世代の数が昨年初めて明らかになった。国立がん研究センターによると、18歳未満の子どもを育てていてがんと診断された人は推計値で年間5万6143人、その子どもは8万7017人。子どもの平均年齢は11.2歳だった。

●家族は第二の患者

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