西島:本当に慣れていないんですって。苦手なんですよ(笑)。

黒沢:その辺は、僕の知らない西島秀俊がいるんですね。

●もしも同世代だったら

──監督と俳優に理想の関係があるとするならば、それはどんなものだとお考えですか。

西島:僕は20代、30代で黒沢監督に撮ってもらい、いま40代の自分を撮ってもらっている。正直、もっと大人にならなければ、と思っているのですが、現代の40代ってきっとこうなんですよね。そういうものを20代、30代でも撮っていただけたのはありがたいことだと思っています。黒沢監督は「いま」を映し出す方だと思っているので。

 監督とは年齢が離れているので、そこは悔しいところです。同世代だったら、同じものを同じように感じられたかもしれない。(「CURE キュア」などの黒沢作品に主演した)役所広司さんと黒沢監督は、同年代として同じことを感じながら作品に向き合えるのではないかと考えると、うらやましく思うこともあります。

黒沢:そう言っていただけると、大変ありがたいですね。映画は現代を映すしかないわけですが、何人かの俳優さんは「永遠」を持っていらっしゃると感じています。確かに20代、30代、40代の西島秀俊がいるわけですが、僕にとっては「永遠に西島秀俊だよな、これ」と思う瞬間もある。そういう意味では、最初に出会った「ニンゲン合格」から離れられないんですね、やっぱり。永遠性を引きずっている。僕にとっては数少ない、理想的な出会いだったのだと思います。

(構成/ライター・古谷ゆう子)

AERA 2016年6月20日号