「乳幼児期は、母親を求める本能がとても強い。子どもはかゆみを訴えてかけば、快感が得られるだけでなく、お母さんにかまってもらえます。それを学習すると、快感と親の注目という『報酬』が欲しくて、さらにかくようになってしまうのです」

 これは心理学で「オペラント条件付け」と呼ばれている反応だ。ある行動(かきむしり)をした直後に本人にとっていいこと(快感と親の注目)があると、「その行動をすればまたいいことがある」と学習し、積極的にやるようになる。

 これを解除する方法は、子どもが望ましくない行動をしているときは、親の注目という「報酬」を与えないこと。かいているときは子どもからスッと離れ、かいていないときこそしっかりスキンシップを図るようにする。こうすることで「かく=お母さんはかまってくれない」「絵本を手にする、おもちゃを触る、など、かくことと両立しない行動をする=お母さんが絵本を読んでくれる、一緒に遊んでくれる」という新たな条件付けをすることができるという。

 ただし、かゆければ手は動いてしまう。そこで同時に、適切なステロイド薬を使って一気に皮疹をゼロ近くまで抑え込み、かいても快感が得られない状態にする。そのレベルまで改善させれば、子どもは「かくと母親が立ち去ってしまうが、かかずに別の行動をすると母親が相手をしてくれる」ことを学習し、母親にかまってもらいたいがためのかきむしりをやらなくなる。

「行動療法と薬物療法をタイミングよくやるのが秘訣。癖になっていると、どちらか一方ではうまくいきません」(大矢医師)

 早ければ3日程度、長くても1~2週間ほどでかきむしりが止まり、アトピー性皮膚炎の症状を改善できる。(ライター・谷わこ)

AERA  2016年3月7日号より抜粋