アレルギーは心理的な要因がからむ「心身症」でもある。子どものアトピーの場合、親との関係見直しが「効く」こともある。
夕方、高木里香さん(35)=仮名=がキッチンで夕飯の支度をしていると、リビングから、「かゆい、かゆいよー」という叫び声が聞こえてきた。
あわててとんでいくと、さっきまでおとなしくテレビを見ていたひとり息子の卓巳くん(3)=同=が、首や膝をボリボリと激しくかいている。
「かいちゃダメ! やめなさい」
里香さんは必死に声をかけ、卓巳くんの腕をつかんでやめさせようとするが、止まらない。
「以前はたまにかく程度だったのに、最近は毎日この状態です」
里香さんは、疲れきった顔でそう話した。
アトピー性皮膚炎によるかゆみをともなう湿疹は、かけば一時的に快感が得られるが、症状は悪化してしまう。肌の状態が悪くなればかゆみが出やすくなってまたかきたくなり、悪循環に陥りやすい。親は子どものかきむしりが始まると、なんとかやめさせようと躍起になる。
「実はこうしたお母さんの行動が、かきむしり行動を助長させることがあります」
こう指摘するのは、子どもの心理に詳しい国立成育医療研究センター・アレルギー科医長の大矢幸弘医師だ。