「この先をまっすぐ行きゃあ、平和台の陸上競技場、そんで舞鶴公園を抜けたら、すぐに大濠公園たい。間違っとらん」

 福岡出身の記者にとっては、懐かしい博多弁。ふるさとへの出張ランもまた楽し。

 おじさんが教えてくれた平和台陸上競技場は福岡国際マラソンのスタート・ゴール地点でもある。そこで生まれた数々のドラマを想像していると、古めかしい門が見えてきた。名島門とある。またしても説明板を読む。へえ、福岡市の指定文化財なんだ。

 門をくぐれば、そこは桜の名所として有名な舞鶴公園。まだ小さいけれど、つぼみがたくさんついている。ほどなく大濠公園の池が見えてきた。さすが聖地だけあって、ランナーもたくさん走っている。道が歩行者とランナー、自転車と分かれていて、ゴムチップ舗装されているので走りやすい。

 眠りから覚めた水鳥やスズメが、餌やりにきたおじさんの周りに集まってきた。その様子を見たくて立ち止まると、「おはよう。きょうは寒くなくていいね」とおじさん。地元の人にとっては何のことはない日常の風景の中に、ふっと一瞬、紛れ込ませてもらったようで、ちょっとうれしい。

 一周2キロの道沿いには福岡市美術館や、日本庭園などもある。時間と体力がある人は何周でもできるだろうが、きょうはこのくらいにしよう。約8キロの出張ランのおかげで気分も爽快。さあ、なんだかいい仕事ができそうだ。

(アエラ編集部)

AERA 2016年2月22日号より抜粋