自宅や外出先、サテライトオフィスなどで、場所や時間にとらわれずに働けるテレワークは、子育て介護のための福利厚生的な制度と思われがちだ。しかし、シスコシステムズにとっては経営戦略。導入は、生産性の向上と、自然災害や事故など不測の事態に備えるBCP(Business Continuity Plan=事業継続計画)のためだ。だから、パソコンや通信回線など、在宅での仕事に必要なものは会社が用意している。

「災害時に無理して出社しようとするほうが危ない。テレワークを日常的に取り入れていれば、何かあったとしても業務は止まりません」(鎌田さん)

 家族がインフルエンザになって出社できなくても困らない。国外の人材の活用も可能だ。ワークスタイルの改革が、文字通り会社を「強く」している。「サボる社員がいるのでは」「自分は正当に評価されるのか」と疑心暗鬼にならないだろうか。鎌田さんは、「そうした心配はありません」ときっぱり。勤務時間の長短ではなくパフォーマンスで評価しているからだ。

 組織全体の目標を個人に落とし込み、さらに期間を定めて「いまするべきことは何か」を上司と面談して決める。それを達成できたかどうかで、評価が決まるという。こうした人事制度は、部下と上司の信頼関係があって初めて成り立つから、必要な時に適切な支援をしてくれたかどうか、部下が上司を評価する仕組みもあるという。

「コマンドアンドコントロール的なマネジメントではない。上司と部下の合意形成を大事にしています」(鎌田さん)

(アエラ編集部)

AERA  2016年2月22日号より抜粋