「この世代の子たちにとって、母親は自分のことを一番わかってくれる『大親友』です。特に、小さいころからお受験を一緒に戦ったりしていると、『同志』でもあります」

 NHKの「中学生・高校生の生活と意識調査」では、悩みごとの相談相手は主に誰かを尋ねているが、2002年の中学生の回答は「友だち」が52%、「お母さん」が25%だったが、12年はそれぞれ42%、38%だった。「友だち」は10ポイント減り、逆に「お母さん」が13ポイントもアップ。お母さんが友だちに代わる存在になってきたことがわかる。

 関東地方の公立高校に通うナナ(17)は、ほとんど毎週末、母親(50)と長時間ドライブする。朝10時ごろ家を出て、近所のコンビニでおいしいコーヒーを買って出発。ナナの夜のコンビニバイトの時間まで7、8時間母親とおしゃべりする。最近は、姑との確執や母親に強くあたる姉への愚痴を聞くことが多い。

「私、末っ子なんで、お兄ちゃんやお姉ちゃんと言い合って泣いたりするお母さんを見ていて、私は常にいい子でいなきゃって思ってます」

 前出の永田さんは「母子密着は今の社会の表れ」だと指摘する。80年代ごろまでは、ある程度の年齢になったら結婚し、子どもを持つということが「常識」とされたが、90年代以降は、結婚しない選択肢もある中で自ら結婚を選び、子どもを持つことをあえて選んだ人が多いので、その分家族は貴重で、余計に子どもをかわいがり、関係が良好な親子が多いと見る。

 永田さんはさらに、高校生の母親世代にあたる40代は女性も就業経験があり、社会情勢にも関心が高い人が多いことに注目する。専業主婦が多かったひと世代前は、就職や政治経済の話題はお父さんの出番だったが、今はお母さんも代われるようになったのだ。共働き家庭では、仕事しかしない父親に対して、仕事も家事も育児もする母親へ尊敬の念を抱くのもうなずける。

「お母さんの評価は下がる要素がありません。ただ、その結果、相対的に父親の存在感が薄れています」(永田さん)

(文中カタカナ名は仮名)

AERA 2015年12月14日号より抜粋