●16兆円の経済効果も

 とはいえ、そんな抜群のコミュ力を発揮して休める人は、ごく一部。こっちは公休を消化するのが精いっぱいで、1週間の有給休暇を取るなんて、仕事するより難しいよ──とボヤいている人は多いだろう。

 事実、2013年の厚生労働省の調査では、労働者1人あたりの有給休暇の取得率は47.1%。企業が付与した有給休暇の平均日数18.3日のうち、8.6日しか消化できていないのだ。九州大学法学部の野田進教授(労働法)は、こう指摘する。

「有給休暇の取得率は2000年以降、ずっと50%を下回っており、世界最低水準です。日本では有給休暇が最大20日、国民の祝日が15日、お盆や年末年始の特別休暇も5日ほどあります。制度面では欧州並みの日数ですが、制度があっても休めていないのが実情です。国民の祝日にしても『休むべき日』とは定められていません」

 野田教授によれば、フランスやドイツでは、従業員が1年に1カ月は休暇を取れるように人員計画を組んでいるので、たとえば12人必要な仕事は13人で回すという。だから、休みは「想定内」で「計画的」。一方、日本はいつもギリギリの人員計画なので、休みは「突発的」で「例外的」とみなされる。つまり、休みに対する姿勢が根本的に違うのだ。

 では、みんなが休みを消化すると経済活動が滞り、景気が悪くなるのかというと、どうもそうではないようだ。

 日本生産性本部の09年の調査によると、日本の労働者が未取得だった有給休暇の合計は年間約4億3千万日。これをすべて取得すれば、その経済波及効果は約16兆円。経済活性化と休んだ人の代替で、新たに約188万人の雇用が創出されると推測している。そう、休むことは、個人にも日本経済にとってもハッピーなことなのだ。

 しかし、日本の職場は、休むことを突発的で例外的な「アクシデント」と捉えがちだ。どうすれば、そうした意識を変えることができるのか。前出の堂薗さんは、こうアドバイスする。

「できる限り早く予定を伝えることが大前提ですが、大切なのは『もう決めたので、休みます』という事後報告ではなく、『予定があるんですけど、どうやったら休めますか』と相談形式にすることです。上司としては気持ちの準備もできるので、休み中のシミュレーションもしやすい。何よりも『困って相談してきたカワイイやつ』と上司の自尊心が満たされるので、いい気分で休ませてくれます。極端に言えば、相談する“ふり”でもいいんです。大切なのは『相談して決めた』と上司に思わせることです」

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