試乗した7両編成の新型車両「LO系」。この日は、2027年開業を目指すJR東海が、報道陣向けの試乗会を開いた(撮影/写真部・工藤隆太郎)
<br />
試乗した7両編成の新型車両「LO系」。この日は、2027年開業を目指すJR東海が、報道陣向けの試乗会を開いた(撮影/写真部・工藤隆太郎)

 時速500キロで地上を走るって、どんな世界なのか。いよいよ現実味を帯びてきた「夢の超特急」、リニア中央新幹線にアエラ記者が乗った。

【リニア試乗体験 その他の写真はこちら】

 それにしても、地上を500キロで走る列車のスピードと乗り心地は、どんな感じなのか。ジェットコースターのようにグングン加速していくのか、振動でスマートフォンを操作できないんじゃないか……。そんなことを気にしつつ、9月22日、いざJR東海のリニア中央新幹線・報道陣向け試乗会に参加した。

 山梨リニア実験線の山梨実験センター(都留市)。興奮を抑えながら、最新車両「L0(エルゼロ)系」の車内へ。中は東海道新幹線よりやや狭く、座席は1列少ない4列シート。車内は禁煙。当然か。

 いよいよ発車。初めはタイヤ走行で走り、時速150キロ近くに達するとタイヤを車体に格納しガイドウェイ(軌道)を超電導の力で浮いて走る。浮上してからの加速がすごい。200キロ、300キロ、350キロ……。車内モニターの速度計の数字が、みるみる上がっていく。スマホだって普通に操作できる。

「さすがに速いな」

 驚きの声が漏れる。しかし、本当に驚くのはここから。時速400キロを超えたあたりから、「ゴーッ」と低い音が車内に響いてきたのだ。普通に会話はできるが、新幹線に比べると明らかに大きい。やがて、耳の奥がツーンと圧迫される「耳ツン現象」に見舞われた。縦方向と横方向の小刻みな揺れも続いている。

 しかも、実験線は約80%がトンネル内なので、内壁に設置された照明が光の帯となって車窓を流れ、目がチカチカする。

 走り始めて約2分。車内モニターが「500キロ」を表示した。なのに、喜びを実感する余裕もなく、メモを取っていると少し気分が悪くなってきた。

 同じ思いをしたのは私だけではないようで、降車後、他社の記者が何人も「揺れ」を指摘。これに対して、山梨実験センターの遠藤泰和所長は、「まだまだ技術のブラッシュアップが必要で、継続した走行試験を行っていく」と、開発途上にあることを強調。耳ツン現象については、実験線は標高差が約400メートルあり、これによる気圧の変化が一因だと説明した。

 では、「ゴーッ」という音の正体は何なのか。飛行機は同じ速度で飛んでも、機内であれほどの音はしない。この点について、浮上式の超高速列車「エアロトレイン」の研究で知られる東北大学の小濱(こはま)泰昭名誉教授にたずねると、空気の流れの激しい乱れが原因だと指摘する。

「ガイドウェイとリニアの車体面はいずれも凸凹状態の上、両者間の間隔が10センチ程度と狭い。その間に存在する空気が、一方では500キロ近くで引っ張られ、もう一方は0キロで止められ、激しい乱流状態になって乱流騒音が発生してしまう。さらに空気は止まったり、急に動いたりを繰り返すので、巨大な空気抵抗を生む」

AERA 2014年10月6日号より抜粋