


土砂災害の報道を受けて、住まい周辺の地形を気にする人も少なくないのでは。東京23区内にも、「土砂災害危険箇所」が多数存在する。このとことが地価などに影響を与えることはあるのだろうか。専門家に聞いた。
そもそも、「危険箇所」とは傾斜度30度以上で、斜面の高さが5メートル以上あり、なおかつ付近に人家が5戸以上の(5戸未満であっても官公署、学校、病院、旅館等に危害が生ずるおそれのある)箇所のことを言う。
土砂災害防止法では、ここからさらに細かく、土砂災害のおそれがある区域を警戒区域(通称イエローゾーン)、土砂災害があった場合、建築物に損壊が生じ、住民等の生命または身体に著しい危害が生じるおそれがある地域を特別警戒区域(通称レッドゾーン)として定める。災害時に危険にさらされる区域を具体的に決めるのだ。
イエローゾーン、レッドゾーンなどの指定を受けると、ハザードマップに「危険な場所」と明記され、場合によっては建築規制がかけられる。かといって、避難をスムーズにしたり、危険箇所を明らかにすることに主眼を置いた法律なので、指定されたから行政がすぐに傾斜地の補修をするというわけでもない。
そのため、とりわけレッドゾーンに対する抵抗感は強い。住民の反対が強いため、ハザードマップ上にイエローゾーンはたくさんあるのに、レッドゾーンがひとつもない地域もあるという。
住民感情としては、風評で地価が下がったり、建築規制によってお金がかかる可能性もあるなどのデメリットを恐れるのも無理はない。
だが、不動産に詳しいトータルブレインの久光龍彦社長は言う。
「確かに、指定が地価に良い影響を与えることはあまりないとは思いますが、警戒区域に指定されるようなところは過去に災害があったり、危険箇所として公表されていたりすることが多く、それらの要因は普通、地価にすでに反映されています。つまり、危険な場所の地価はもともと安めに設定されているので、指定が引き金になって大暴落、などというケースはあまりないのです」
※AERA 2014年9月8日号より抜粋