30年近く野立て看板を扱うアイワ広告(東京都町田市)によれば、東海道新幹線沿線の野立て看板の相場は月3万~4万円(撮影/写真部・工藤隆太郎)
30年近く野立て看板を扱うアイワ広告(東京都町田市)によれば、東海道新幹線沿線の野立て看板の相場は月3万~4万円(撮影/写真部・工藤隆太郎)

 普段、何げなく見ている新幹線の車窓からの風景。そこから「日本の経済」を読み解く人がいる。

 経営コンサルタントとして知られる小宮一慶さん(56)だ。仕事柄新幹線をよく利用し、昨年1年間だけで主に東京を起点に延べ133回乗ったという。小宮さんが新幹線から見える経済指標として挙げるのが、沿線に立ち並ぶ「野立て看板」だ。

 2003年と09年、小宮さんは東海道新幹線の三河安城─豊橋間の野立て看板の会社名と数を数えて比べた(北側)。すると、03年には26あった看板が09年には13と、6年間で半減した。理由として、三つの仮説を立てる。(1)開発が進み、看板を立てられる土地が減った(2)防音壁が増えた(3)車内でインターネットやスマホを使って外を見る人が減ったため、看板を見る人が減り、広告の費用対効果が悪くなった。

「看板の減少は、もちろん景気の影響もあると思います。ただそれより、もっと大きな世の中の流れに影響されているような気がします」

 新幹線沿いの野立て看板といえば、多くの人が目にしたことがある「727」。これは、化粧品製造・販売会社「セブンツーセブン」(本社・大阪)の商品。同社との契約美容室でしか手に入らない化粧品だ。

 同社によれば、他社がやっていない広告の独自性を追求し、選択したのが野立て看板だったという。東海道新幹線沿いに初めて設置したのは1979年で、今は約5分に1本見えるくらいのペースで設置しているとか。その効果については、

「多くの愛用者様がおられるので、広告効果があったのではないかと考えております」(同社)

 さらに小宮さんは、新幹線の窓から見える景色から、日本の経済をマクロ的に分析する。

「新大阪から東京に帰ってくると、新横浜駅を過ぎたあたりから、高層マンションやビル群が見えてきます。とくに、武蔵小杉や大崎駅周辺は、駅を取り巻くように高層ビルが立ち並んでいますが、かつてこの駅周辺には目立った建物はありませんでした。東京一極集中が進んでいます」

AERA 2014年8月25日号より抜粋