早稲田大学文化構想学部低引琴美さん(23)内定した会社のワーキングマザーグループに参加し、先輩の働き方について情報収集中。夫とカレンダーを共有し、お迎えや家事を分担する(撮影/写真部・岡田晃奈)
早稲田大学文化構想学部
低引琴美さん(23)

内定した会社のワーキングマザーグループに参加し、先輩の働き方について情報収集中。夫とカレンダーを共有し、お迎えや家事を分担する(撮影/写真部・岡田晃奈)

 仕事に育児に頑張る、ワーキングマザーが増えつつある。一方で、子持ち新卒として就職活動に奮闘する母親もいる。

 つい1カ月ほど前まで就職活動中だった早稲田大学の低引(そこびき)琴美さん(23)。何社も企業を回った後、リクルートスーツのまま小走りに向かう先は、自宅近くの東京都認証保育所だった。長男(1)の迎え時間にいつもギリギリで滑り込む、現役の大学生ママだ。

 大学2年の時に始めたインターンを通じて夫(30)と知り合った。休学してのめりこむほど仕事に夢中になった一方で、両親の離婚を経験していたため家庭という基盤も持ちたかった。交際半年がたち、「この人となら仕事と家庭を両立していけそう」と感じ始めた直後に妊娠が発覚。産むことに、迷いはなかったという。

 2012年5月に結婚し9月に出産後、休学期間を延長して半年間の「育休」に入った。家事と育児だけで一日が終わり、社会から取り残されていくような感覚。「私が家にいることで誰が幸せになるんだろう」と悩んだ末に、思いは固まった。

「やっぱり働きたい」

 でも、子持ちの新卒女子なんて採用してもらえるのだろうか……。13年4月に長男を保育所に預けて復学。6月頃からスタートが早い外資系やベンチャーの就職説明会に顔を出し、採用担当者を見つけては尋ねた。

「子どもがいるんです。門前払いされないためにはどうすればいいんでしょうか」

 意外なことに、反応は「前向き」だった。時間的制約のある働き方に向き合い、成果を出したいという姿勢や意欲は評価できる。子育ては就活の「武器」にもなりうる、と。

「両立という課題を設定し解決策を考えることで、私だけの就活スタイルが作れる。これで結果まで出たらすごいことかも」

 選考の過程では、お迎えのためにグループワークを途中抜けし、長男が熱を出したため遅れて参加したこともある。自分のためだけに時間を使えなくなったもどかしさと、選考に影響するのではないかという不安。就職活動、勉強、家事、育児、すべてをうまく回せない悔しさに、涙があふれた日もあった。

 いま思えば、あれがいわゆる両立の悩みの第1ステージ。「子どもを育てながら働く」現実の一端を知り、自分が目指す働き方がより明確になった。今年4月、大手人材会社に内定。来春、入社してからが本番だ。

AERA  2014年5月5日―12日合併号より抜粋