近年、大企業とベンチャー企業が連携するケースが増えている。そこには、成長のためベンチャーの技術や事業を成長の糧にしたいという大企業の考えがあるようだ。

 そんな動きを背景に、大企業とベンチャーのマッチングの場もにぎわっている。

 野村證券とトーマツベンチャーサポートは、毎週木曜の朝7時からベンチャーが自社のプレゼンを行う「Morning Pitch」を開催。2013年の開始以降、約50回でのべ3千人が聴講し、約50件の出資・提携事例が生まれた。大和証券も毎月1回、ベンチャー企業のプレゼンや交流を促す場を設ける。

 だが、協働先が見つかっても、関係を築けないケースもある。大企業とベンチャーのマッチングを行う大和証券の加藤輝さんは、日本企業ならではの「自前主義」が壁だと指摘する。

「大家族主義の日本企業は、異物を取り込むことが苦手。大企業にいても、外部と連携を取り、変化を起こす『イントレプレナー』が求められています」

 自前主義を打破し、ベンチャーなど外部組織と連携する専門組織をつくった会社もある。大阪ガスは10年、自由競争が進むエネルギー業界での生き残りをかけ、外部企業との連携を図る「オープン・イノベーション室」を設置した。連携件数は、プロジェクト単位で取り組みを始めた09年以降で126件、うち6割は中小企業やベンチャーなど小規模な会社だという。

 発足当初から室長を務める松本毅さんの功績が大きかった。技術開発を行う10の部門を毎年訪問し、困っていることはないか尋ねる「社内キャラバン」を行った。また初年度は大阪ガスの技術ニーズを発表する「技術マッチング会」を全国25カ所で開催、大阪ガスの取り組みを知ってもらうため講演会も全国70カ所で行った。これらの繰り返しで、社内からの技術探索依頼は累計205件、ニーズに対して外部からもらった提案は2500件を超えたという。

AERA  2014年3月3日号より抜粋