スクエアの社内カフェ。スマホがあれば購入できるため、誰も財布を持っていない。レジまわりもすっきりしている(撮影/ジャーナリスト・津山恵子)
スクエアの社内カフェ。スマホがあれば購入できるため、誰も財布を持っていない。レジまわりもすっきりしている(撮影/ジャーナリスト・津山恵子)

 アメリカのシリコンバレーは今、第2次起業ブームにわいている。画期的な発明で、中小企業や消費者を救うベンチャーも登場した。

 サンフランシスコに次々と出現している、列ができるカフェ「ブルーボトル」や「サイトグラス」のレジには、無粋なクレジットカード端末はない。低いスタンドにのったiPadが2、3台あるだけだ。iPadの縁にある白くて小さな四角い読み取り機にクレジットカードを通し、iPad画面に指でサインするだけで支払いが終わる。

 iPhoneとiPadの読み取り機とアプリを無償で事業主に提供しているのがモバイル決済のベンチャー、スクエアだ。端末導入の経費もかからず、小さなスマートフォンさえあれば誰もがカード決済を始められる。カード社会の米国では、中小事業主にとって「救世主」的サービスだ。

「創業者兼CEOのジャック・ドーシーは、ソーシャルメディアを使って12歳の子でもオバマ大統領とコミュニケーションできる時代に、買い物だけはキャッシュやカードなど制限が多く、前近代的で不自由なままだと言うの。彼の夢は、財布を持ち歩かなくてもすむようになること」と説明するのは、製品ディレクターのコビ・ブルックリン。

12年末には全米のスターバックス7千店舗でもサービスを開始。スマホにダウンロードしたアプリが自分のクレジットカードと連動し、スマホ画面のQRコードをレジのスキャナーにかざすだけで支払いが終わる「スクエア・ウォレット」を提供する。日本の「お財布ケータイ」にあたるサービスがなかった米国では画期的だ。

 今年2月には全米で人気の自然食品専門スーパー、ホールフーズ・マーケットとも提携。例えばニューヨークの同店では一日中、レジに長蛇の列ができて殺気立っているが、スクエアが導入されれば、少量買いの客がレジを通らず簡単に支払いができるようになる。

 スクエアは昨年、日本にも進出。米メディアによると、新規株式公開(IPO)も近い。

AERA  2014年3月3日号より抜粋