RYOZAN PARK6階建で全39室で、個室の広さは約10平米~。月額賃料は7万2000円~。月額共益費1万5000円には、インターネット、電気、水道代が含まている(撮影/村上宗一郎)
RYOZAN PARK
6階建で全39室で、個室の広さは約10平米~。月額賃料は7万2000円~。月額共益費1万5000円には、インターネット、電気、水道代が含まている(撮影/村上宗一郎)

 近年増えている、シェアハウスという住居スタイル。その形はさらに進化を続けているようだ。

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 黒を基調とした約50畳のダイニングキッチン。室内を飾るのは、オランダ・モーイ社のホースランプやピッグテーブルなど、個人の収入では一生縁のなさそうな高級インテリア。真っ赤なアイランドキッチンには、炊飯器やパンメーカー、エスプレッソマシン、高性能ミキサーのバイタミックスまで揃っている。

 ここは、東京都豊島区にあるシェアハウス「RYOZAN PARK(リョウザンパーク)」。住人は、24歳から47歳。デザイナーや会計士などの専門職、有名企業の社員と、職業はさまざま。日本人だけでなく、スウェーデン人やチェコ人、ドイツ人、中国人と、国籍も多彩だ。

 オーナーの竹沢徳剛(のりたか)さん(32)は、東日本大震災のニュースを当時住んでいたアメリカで知り、「日本に新しいコミュニティーをつくりたい」と帰国。実家が所有するオフィスビルを改装し、2012年にこのリョウザンパークをオープンした。

 近年、こうした豪華な共用設備を備えたシェアハウスが増えている。シェアハウスとは、自分の個室とは別に、同居者全員が利用できる共用スペースを備えた賃貸住宅のこと。

「シェア住居の登録件数は、ここ数年で毎年30%拡大している」と語るのは、05年の開始以来、1500物件以上を紹介してきたシェア住居専門メディア「オシャレオモシロフドウサンメディア ひつじ不動産」を運営する北川大祐さん(32)。問い合わせ10万件以上の蓄積データをもとに、北川さんはこう分析する。

「シェアハウスの入居者像は、正社員で働く20代後半の女性。この3年間で20代前半の比率が減少し、30代と40代が増加傾向に。平均年齢は07年の27.7歳から12年は28.9歳と、5年間で1.2歳上昇した。男女比は、男女共用物件では4:6だが、女性向け物件の供給が多いため、全体では女性比率が高い。正社員比率はこの5年で約16%増え、非正規雇用者と正社員の割合は10年に逆転した」

 さらに近年は、単に共用部を豪華にするだけでなく、オーシャンビューやリバーサイドといった立地をウリにした物件、外国人と英語でのコミュニケーション力を高められる、ペットと一緒に住める、楽器演奏ができる防音室やヨガスタジオがある、カーシェアリング設備がある、農園で自家栽培が楽しめるなど、個性化が急激に進んでいる。

 前述のリョウザンパークはイベントスペースを備え、「国境なき医師団のメンバーから話を聞く会」などの社会活動系から、住人の誕生パーティーなどのエンタメ系まで、さまざまなイベントを頻繁に行っている。

「シェアオフィスやイベントスペースがあって、仕事に便利そう」と入居を決めた井上祐巳梨(ゆみり)さん(27)は、昨年4月広告会社を退社して独立。現在は、テレビCMの企画制作や出版プロデュースなどを行っている。仕事柄、面白い人に会う機会が多いことから、住居のイベントスペースを利用して、すでに何度か講演会を催した。

「自分が興味を持ったことを周りとシェアできるし、その逆もある。人と人とがつながって、そこからまた新しいコミュニティーが生まれていく。まだ仕事に結びついてはいないけれど、人と人とのつながりがプラスになっている」

 と井上さんは話す。

AERA 2014年1月20日号より抜粋