将棋女子に“指す”楽しみを指導する女流棋士の高橋さん(撮影/写真部・慎芝賢)
将棋女子に“指す”楽しみを指導する女流棋士の高橋さん(撮影/写真部・慎芝賢)
女子の多くは、お手製の可愛い巾着袋に駒を入れて、持参する。授業中は、真剣そのものの表情で、一言も聞き逃すまいと、集中している(撮影/写真部・慎芝賢)
女子の多くは、お手製の可愛い巾着袋に駒を入れて、持参する。授業中は、真剣そのものの表情で、一言も聞き逃すまいと、集中している(撮影/写真部・慎芝賢)

 男性の趣味と思われがだった将棋の世界に、最近「将棋女子」が増えてきている。

 将棋女子に限らず、最近の将棋ファンは、(1)観る将(プロ棋士の試合を観戦して楽しむ。ツイッターで応援もする)(2)指す将(自ら指して楽しむ)(3)撮る将(対局を撮影して楽しむ)に分類される。

 将棋女子は主に(1)(2)。「観る将」の増加には、ニコニコ生放送も寄与している。プロの試合を生中継するため、リアルタイムで観戦・応援できる。今春開催された、現役プロ棋士がパソコンソフトに敗北して話題になった電王戦は、ニコ生で延べ230万人が視聴し、280万件のコメントが寄せられた。敗北が決まった瞬間、視聴者のコメントが「あ~~~」と、画面上で大量に流れた。

「指す将」女子たちは、仕事帰りに東京・下北沢の将棋カフェなどで、プロから指導を受けている。指導するのは女流棋士の高橋和(やまと)さん。プロ引退後、道場に行きづらい女子に教えようとツイッターでつぶやいたところ、続々女子が集まってきた。いまでは週に1回、下北沢などのカフェで「Shogi otome」という教室を開いている。ツアーを組んで、将棋駒の街、山形県天童市にも出かけている。

「今は、さらに主婦を中心とする将棋madamも増えてきています」(高橋さん)

 女流棋士の北尾まどかさん(33)も、将棋女子の指導に尽力している。子どもたちに人気の「どうぶつしょうぎ」の開発者でもある。「どうぶつしょうぎ」はテレビで紹介されるや、売り切れ店続出。現在は将棋女子用のオシャレな将棋盤も開発中だ。自身が主宰する教室にファンが多い森内氏を招くなど、将棋女子のハートもがっちり押さえている。こうした試みも、「世界中に将棋を広めたい」からだ。すでに、英訳の将棋指導本を発行したり、欧米、アジアで指導対局を行ったりしている。

 女子から世界へ。将棋の人気の広がりはとどまるところを知らない。ハマる理由を、多くの将棋女子たちはこう話す。

「こんなに面白いもの、男性だけに独占させるなんてもったいないです!」

AERA 2013年7月15日号