「子どもの活動は子どもの力でやるのが普通かなと思うのだけれど」(東京都の40歳女性)。親も二人三脚で駆け回らなければいけない部活に、不満も漏れる(撮影/鈴木愛子)
「子どもの活動は子どもの力でやるのが普通かなと思うのだけれど」(東京都の40歳女性)。親も二人三脚で駆け回らなければいけない部活に、不満も漏れる(撮影/鈴木愛子)

 子どもが熱心に取り組むクラブや部活動。それをサポートする親たちも必死だ。雑用や監督の接待のほか、親同士の上下関係も厳しい。ここまで親がかりであることは必要なのか。

 神奈川県内に住む母親(54)は毎朝、ソフトテニス部の朝練で5時のバスに乗る高校生の娘のために、朝昼夜の3食分の弁当を作る。強豪校なので覚悟はしていたが、休みは正月の2日間だけ。遠征費や毎年新調するユニホームなどに年間30万円以上かかる金銭的負担も大きかった。

 こうした親の負担は子どもの役割や学年によっても変わる。野球強豪校として知られる都内私立高校の元部員の母親(47)は、父母会の宴会で「異様な光景」を目の当たりにした。

「1年生の親は、監督や2、3年生の親にお酌したり、注文を取ったりして座ることもできない状態でした。ふんぞり返った若い親に年配の親がペコペコ頭を下げていて驚きました」

 試合の采配を握る監督の接待も親の役目だ。宴会後は監督のためにタクシーを呼び、ドアを開け閉めして見送る。個人的にお歳暮や心付けを渡している親もいた。親のボーナス時になると、練習道具や栄養補助食品など数十万円の商品の業者説明会まであり、購入した子は監督の特別指導を受けられることもあった。レギュラー入りのためにどこまでやるのか。親同士が連絡を取り合い右往左往するという。

「子どもが甲子園で活躍することだけを目指し、小さいころから時間もお金もかけてきた親たちは、子どもよりも追い詰められている。傍から見れば狂気の沙汰かもしれませんが、親が悪いと一言では片付けられない。常識的な感覚でブレーキをかけられる指導者が必要なのです」(元部員の母親)

AERA 2013年1月28日号