いま、障害を持つ人の雇用をすすめる企業が増えている。

 業務用システムを手がける富士ソフトの子会社、富士ソフト企画(神奈川県鎌倉市)に勤める堀越隆之さん(47)は、ソフト会社でシステム作成の仕事をしていた1999年、自宅でくも膜下出血を発症した。

 半年近い闘病生活を余儀なくされ、開頭手術を4回した。自分の経歴を部分的に思い出せないなどの記憶障害が残った。会社は辞めざるを得なかった。その後も食品会社やスポーツ用品の販売店などで働いたが、記憶障害が続き、長続きしない。そんなとき、妻から障害者枠での就職を勧められた。

「なぜ自分が障害者として働かなければならないのか悩みました。でも家族のため、生きていくためには仕方がないと納得しました」(堀越さん)

 東京都リハビリテーション病院で診断を受け、精神障害者保健福祉手帳を取得した。健常者と同様、障害者も若い世代から採用が決まることが多く、就職はなかなか決まらなかった。パソコンを使った事務処理技術の講習を受けながら、就職活動を続け、富士ソフト企画に入社したのは07年。親会社の社内便などの仕分けと配送、来客用のペットボトル飲料の注文の仕事などを任されている。

 同社人材開発グループ長で秋葉原営業所長の遠田千穂さんは、次のように話す。

「当社では一人一台、パソコンを使った仕事が大前提。障害者が持つ独特のセンスを生かしてホームページをデザインする人もいます。障害者を雇う会社というと『何を組み立てているのですか』と、ラインの仕事を思い浮かべる人が多いのですが、障害者の職域を健常者目線で決めないことが大事。戦力として障害者を雇用すべきです」

AERA 2012年10月29日号