伝説の元タカラジェンヌ、専門はクセの強いおじさん役!? 15年間の爆笑回想記

2021/08/05 20:00

『こう見えて元タカラジェンヌです』天真みちる 左右社
『こう見えて元タカラジェンヌです』天真みちる 左右社


 「宝塚歌劇団」といえば、キラキラと輝くスターの宝庫。多くの人が、見目麗しき男役や可憐で清楚な娘役などのトップスターを思い浮かべるのではないでしょうか?
 そんななか、「吸血鬼に血を吸われて狂う不動産仲介人」や「裏で麻薬を密売している医者」「モヒカンのチンピラ」「常に半目(薄目)状態の右大臣」などクセの強いおじさん役で存在感を発揮したタカラジェンヌがいます。
 それが『こう見えて元タカラジェンヌです』の著者・天真みちるさん。表紙には角刈り頭にねじり鉢巻きをし、バッチリと"ヅカメイク"をほどこした天真さんの写真が使われており、彼女の名コメディエンヌぶりがうかがえます。本書はそんな天真さんが、「宝塚を目指し、なんとか入学し、自らの意思で卒業するまでの約15年間」(本書より)を軽妙な筆致で記したエッセイです。
 2004年に宝塚音楽学校に入学した天真さんは、2年間の学校生活を経て、宝塚歌劇団に入団。花組の所属となります。そして新人公演の『アデュー・マルセイユ』で「観光客の男」の役を演じて以降、さまざまなタイプの"おじさん役"が続いていくのです。
 研究科4年目に『フィフティ・フィフティ』の公演で「山間の村の男」の役をもらったときには、「自分以外の村人を演じる方々がどう表現するか悩まれている中、私は、ワクワクが止まらなかった。なんなら、男役としての『格好良さ』を研究することよりも俄然乗り気で、村人の『面白さ』を突き詰めようとしていた」(本書より)という天真さんは、あることに気づきます。「私は二枚目よりも『情報量の多いおじさん』を演じるほうが性に合っている」(本書より)ということに......。
 研究科10年目を迎えるころには、一人前の男役としてさらに「本物」のおじさんへ擬態するべく、所作、発声、役作りに加え、タカラヅカ特有の「メイク」にも力を入れるようになります。おじさん役には不向きともいえる美肌の持ち主だったため「肌よ、頼むから荒れろ!」と心の底から願ったり、他のおじさん役の人たちと「梅田のあの店、行きました? ハチャメチャに渋いアクセサリー売ってました」などといった情報交換をしたり。天真さんの役に対する真剣さを知れば知るほど、読者は思わずクスッと笑ってしまいます。
 
 とはいえ、天真さんも当初から歌って踊れるおじさん役を目指していたわけではありません。ずっと憧れていた"二枚目"な役と、クセのあるおじさん役とのギャップに悩んだことも......。また、初めての見せ場ではあまりの緊張からパニックを起こし、長ゼリフをすべてすっ飛ばすハプニングを起こしたこともあるといいます。
 宝塚歌劇団ではなくとも、こうした悩みや失敗は誰にでもあるもので、共感できる人も多いはず。それを天真さんがどう乗り切ったのかは、人生の参考になる部分もきっとあるでしょう。
 2018年に宝塚歌劇団を退団したあとも、舞台やイベントなどの企画・脚本・演出、物書きとして多彩な活躍を見せている天真さん。「見たくなくても、あなたの瞳にダイビング!」という自己紹介のとおり、本書を読めば自然と彼女のトリコになってしまうでしょう。
[文・鷺ノ宮やよい]

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