『水道橋博士のメルマ旬報』過去の傑作選シリーズ ~ある日のマッハスピード豪速球ガン太~(vol.3) 〈BOOKSTAND〉|AERA dot. (アエラドット)

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『水道橋博士のメルマ旬報』過去の傑作選シリーズ ~ある日のマッハスピード豪速球ガン太~(vol.3)

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(写真:BOOKSTAND)

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 芸人・水道橋博士が編集長を務める、たぶん日本最大のメールマガジン『水道橋博士のメルマ旬報』。


 過去の傑作選企画として、かつて水道橋博士の運転手も務め、現在、気鋭の芸人として活躍中のマッハスピード豪速球ガン太さんによる連載『ハカセードライバー』から、僕が大好きな原稿を無料公開でお届けします。是非、お手すきの時に一読ください。(編集担当/原カントくん)


※vol.1、vol.2はこちら。


*****


■2013年11月09日

本日は音楽フェス感覚のトークイベント「トークストック2013」に水道橋博士出演。


博士のトーク企画なのですが『ダイノジ大谷』との共演を博士から希望して今回大谷さんをゲストに迎えてのトークライブです。

博士も自意識が物凄く強い方だが大谷さんはそれに輪をかけて自意識の塊のような方と言うのが共演したい理由だったようです。

大谷さんの出演が決まってから博士はこの二人ならではのトークライブが何か出来ないかと数週間考え込んでいました。


自意識の塊の二人だからできる事・・。


何日か考え込んだ後に博士が「何をするか決まった!」とボクに語って下さいました。


「離婚を賭けてトーク勝負をする!!離婚デスマッチだ!!!」


また良く分からない事を言い出した・・なぜトークライブが離婚デスマッチになってしまうのか・・。

「離婚デスマッチですか!?」

「そう!離婚かけてトークバトルをする!!」

「なぜ、離婚をかけなければいけないのですか?」

「この前の放送禁止2013見て思いついた!」


なるほど先日見に行った『カンニング竹山放送禁止2013』の一年間一日一人に一万円あげる生活という企画に影響をうけたのだ。

そのライブのクライマックスで竹山さんは元カノ5人に一万円を渡しに行く旅をするのですが、この流れで今の奥さんも巻き込みガンガンとディープな元カノとの下ネタも披露し

そのヤバい内容のライブを奥さんに初日舞台で全部見られてしまったというオチまでつける自分を晒しまくる漫談があったのですがこれを見て博士は

「こんなにも自分をさらすなんてすごい!自意識の真逆じゃないか!」と非常に感銘を受け離婚デスマッチと言う企画を考えついたということです。

確かに自意識とはかけ離れた企画だとは思うがメチャクチャすぎる企画だ・・。


本番が近付き大谷さんが楽屋入りしてきた、すると大谷さんは博士を見つけるなり挨拶もないまま「離婚デスマッチ何かしないですよ!僕承諾してないですもん!僕になにも得が無いじゃないですか!!」と吐き捨てた。


あれま?てっきり大谷さんと話し合った末この企画に落ち着いたと思ってたので大谷さんのこの発言には驚いた・・博士が勝手に言っているだけだったのです!!

それはそうだ、離婚を賭ける何て承諾する人がいる訳ない・・。


相手がこんな感じでも全く悪びれず「まあ離婚届に早くサインしてよ。奥さんもつれてきたでしょ?」と博士。


よく見ると大谷さんの奥さんが心配そうに離婚届を持ち心配そうに横に立っている。

少し前に楽屋入りしていた博士の奥さんも同様だ・・何なんだこの世界観・・。


ちなみに大谷さんはこんな事を賭けてライブするなんて奥さんには言い出せず何も言わずに今日奥さんを連れて来て先程ようやく伝えられたばかりらしい、博士を見る大谷さんの奥さんの瞳には憎しみのようなものが混ざって見えた。

「まあ一応サインしますけど俺は嫌ですからね!!」 

ここにきてこの状況・・オチも何も決まっていないこのライブ一体どうなるのだろう・・。


不安要素だらけのライブはスタートした・・離婚届をもって袖でスタンバイする両奥様。

先程両夫婦交えてされた打ち合わせでは、すぐ両奥さんを呼び込み夫婦そろってお客さんにライブ趣旨説明をしトークバトルが始まる手順だったはずですが。

・・・いつになっても呼びこまない・・2人で話し込んでしまっている・・

どうしたどうした?いつになっても呼び出さない。

奥さんをさらす事で自意識をさらすって事をしたかったんじゃないのか?・・

まさか博士忘れているのでは・・呼び出され離婚届まで用意させられて忘れられるなんて

これはシャレになりません。


"くしゃくしゃ"両奥様の離婚届を握る手に力が入る・・どうしよう、こっちがヒヤヒヤする!!

何とそのまま離婚の話はせずにライブは終盤に、基本的なトークの内容はどちらがより自意識が酷いかという事しかしていません・・。


残り10分くらいになったところで思い出したように離婚の話をしだした2人・・

奥さんを舞台にあげる流れに・・当然客は構成がメチャクチャなためそこで盛り下がる。

最初に説明すべきだ・・今さらこれは離婚を賭けていたと言われても・・みたいな雰囲気が漂う・・まずい!オチに向かわなければいけないのにこの空気!と思っていると

「俺は離婚なんかかけたくないよ!オレ得しないもん!」と大谷さんが吠えた!


「博士!自意識の殻を破ったたと言ってるけどあんた内輪の中でしか何にもやってないよ!『浅草キッド』歌ったって言ったって後輩と一緒!三又ダンスも後輩の前だけだろ!」

先日の北野合衆国ライブの話しをトークでしていたのでその事を大谷さんが突いてきます。

「いや客も居たよ。」

「いいや!本当に自意識開放するって言うなら俺の年末出演するフェスの一万人近いお客さんの前で踊れや!」 一気に捲し立てる大谷さん!!!


この後輩芸人の激しい挑発に博士が黙っているはずが無い!!真っ直ぐ大谷さんの眼を見つめながら博士が口を開きます!!


「年末はもう家族旅行の手配しちゃったんだよ!」


「家族旅行を予約?・・あんた全然離婚する気ないじゃないか!!!」


強烈なツッコミで笑いが起きた。


「じゃあ分かった!テレビで漫才をしてくれ!テレビサイズのネタを作ってテレビでネタをしてみろ!!」

と言う何故か大谷さんに命令をされる構図になってしまったのだが・・その大谷さんの言葉に観客は大盛り上がりこれは博士引くに引けない雰囲気に・・。

(浅草キッドはテレビで漫才をする事を意識的に封印している。)


「わかった・・WOWWOWで漫才をするよ!」という博士の言葉で離婚デスマッチの幕は閉じた。


しっかりと離婚を逃れる着地点までトークをもっていった大谷さんは安心したのか舞台袖に戻ると奥さんの手を握り奥さんの手で自分の汗を拭うようなしぐさをしていた、それが妙に印象的で何だかこの一件で夫婦の絆が深まったように見えた。


ちなみに奥さんの手を握る大谷夫婦を横目に博士は"スー"と楽屋に一人で戻っていった為

家に帰った後引くほど奥さんに叱られたそうです。


この数日後自体は思わぬ方向に向かいます。

トラブルで博士家の家族旅行が1月1日からに変更になり博士が

「年末踊れることになったよ。」と言い出したのです!

まさか日にちが空いたとしてもダンスを踊るという選択をするとは思っていなかったため驚きました!!

しかし博士曰く、テレビ用の漫才のネタを考え直し玉さんにテレビで漫才をする事の説得してさらにネタ練習の労力を考えたらこっちの方がマシと考えたとの事です。

 

はたしてダンスが苦手で大嫌いな博士の年末ダンスいったいどうなってしまうのでしょうか!?


■2013年12月9日


朝NHKに向け出発する。しばらくすると博士が

「年末のダンスがもう憂鬱だよ、やりたくないな・・」とぼやいている。


「本当にやるんですね?」

「だって、赤江君(玉袋筋太郎)説得するの大変だし漫才はまたネタ作るのとか考えたら俺が踊るのが一番得策だもん。」

「確かにそうですよね・・。」

「はあ、ダンス嫌だなー本当にダンス嫌い・・」

「えーじゃあやらなければいいじゃないですか・・」

基本的に博士は大谷さんの先輩であるしこの約束をした『トークストック』というイベントを見ていたという人の人数だってたかが知れているはず、博士がやらないといえばやらなくていいはずなのだ。

 

「いやー言っちゃったからなー・・」


そうなのだ博士は一度自分で言ったことは基本的に全部やらないと気が済まない方なのだ・・だからあまり先走って何も言わなければいいのにすぐ「~やるよ!」と言ってしまって後にやらざる負えなくなって「言わなければよかったー」と頭を抱えている人なのだ

良い言い方だと『律儀な方、有言実行伊達男』だが『ミスター口は災い』とも言える。

 

しかしボクはこんな博士のど真面目な性格、真面目ふざける姿勢が大好きだ、この年末ダンスを頑張って応援をしよう!!


「大変でしょうけど頑張ってくださいね!!」

「うん・・じゃあガン太がまず『フォーチュンクッキー』覚えてくれ・・」

「え?」

「ああ、ダンスの曲が『AKBのフォーチュンクッキー』なんだよ。」

「いや『フォーチュンクッキー』は分かってるんですけどもボクが覚えるんですか!?」

「うん、ガン太が覚えて俺に教えて。」

「えー・・はい・・。」


何という事だ!!ボクまで覚えなければいけないことになってしまった!ボクは関係ないと思っていたのに・・応援だけしていればいいと・・

一度ボクが覚えたのを博士に教えるのは二度手間ってやつじゃないのか?

ちょっと参ったな・・1月19日の単独ライブが迫っていてボクなりにやる事がいっぱいあってカツカツの時期なのだ。


これは、あまりチンタラやってられない、良し!今日中に覚えてしまって後日まで引き延ばさないようにしよう!


この日の空き時間YouTubeを見まくりボクは何とか7割方ダンスを覚えることに成功した。

7割覚えとけばダンス素人の博士にならボクのアラは見つからずに教えられるはずだ。

とりあえずこれで様子を見よう。


2013年12月12日


今日は博士NHKラジオのすっぴんが12時に終わるとその後何もないのでダンスの練習をするとの事。


今日が初練習だが12時に終わるのだから時間はたっぷりある14時から20時くらいまでたっぷりやれば今日一日でだいぶん覚えるはずだ・・できれば今日一日で大体覚えて後は自立していただきたい・・(単独が控えていてカツカツなのだ。)


帰り博士が一番愛するカレーなる物をご馳走になったあと家に帰ったので時間は14時


「博士!ダンスレッスンしましょう!」

「うん・・」

倉庫に向かいとりあえず『フォーチュンクッキー』の映像を流しながらレクチャーする事に。


どうやって教えようか・・とりあえず一緒にやってみよう。

「こうやってこういう動きなんですが・・ここまでは出来ますか?」

「うん・・」恐る恐る踊りだす博士。


"ヘコ""ペコッ""ヘコヘコ""ヒョコペコ""ヒョコ""ヒョコ"


マジか・・信じられないくらいできてない・・死にかけの虫みたいな動きだ。


「横にパンチしながらですね、逆の足をパンチする方向に出すんですよ。」

「こう?」

"ヒョコ""ペコ""バキョ"

「全然違います・・」

これは参った、出来なさすぎる!そして面白すぎる!何て動きをするのだ!

笑っていいのか分からないが我慢が出来ない・・つい笑ってしまう。

博士も自覚があるから全然笑っていいと思っているかもしれないが、流石に笑いすぎると気分悪いだろうから何とか我慢する。


20分程練習すると

「よーし、卓球をしよう!」とラケットを握りだす博士。

「え?全然ダンスしてないじゃないですか卓球なんて・・」

「卓球するんだよー!!」

「はい・・」

少し声を荒げられ卓球をする事に・・・しかし卓球は楽しい。


卓球を30分ほど楽しんだところで

「よし体動かしたら良い原稿がかけそうだ!ちょっと書斎で原稿を書いてくる!」

「まだ20分しかダンスしていないですけど・・」

「お前まだいるんだろ?17時くらいに戻ってくるからそれからダンスもう一回しよう。」

そう言い残して博士は部屋から出て行ってしまった・・時間は15時、まあ良い原稿を仕上げることが博士の仕事だそりゃしょうがない!原稿をしっかり仕上げて頂いて17時から猛特訓をしよう!


しかし17時、18時になっても博士はやってこない・・原稿が捗っているのか・・「まだですか?」と行くのもなんか違うなもうちょっと待とう・・。


19時、20時になっても来ない・・忘れているのか?

もう20時半じゃないか!しびれを切らし博士の書斎に向かった。

部屋を覗くと博士はベッドに横になり本を読んでいた・・。

「あのー・・」

ボクと目が合うと"ん?"みたいなとぼけた顔をした・・。

「やらないんですか?」

「ん?もうそんな時間?」

「約束の時間から3時間半も過ぎてます。」

「そうか行こうか・・嫌だな・・」


練習所の倉庫に着くなり卓球台の前に立ちラケットを構える博士。

「よーし練習だ!」

「いやいや!卓球の練習じゃなくてダンス!!」と一応突っ込んでみたが目がマジなのでまた卓球を始める。

小気味いいラリーが続く中思った・・何か博士サボり魔だな・・しかし白熱したいい試合だ・・卓球に罪は無い楽しい。40分程したとこでようやくダンスレッスンは再開された。


「行きますよ博士さっきやったやつです。横にパンチしながら逆の足をパンチする方向に出す。」


"ヘコ""パキョ""ヘコヘコテコ""ピヨーン"


・・こりゃ参ったさっきちょっと出来るようになったはずのフリがまったく出来なくなってしまっている・・しかも何ならちょっと最初より下手になっているくらいじゃないか!ショックだ・・。

何とか教えること約30分「もう今日は終わり!!」スパン!と博士が練習をいきなりやめて家へと帰って行ってしまった・・またしても卓球の時間の方が上回った。

何だか卓球がすごく上達した一日だった。


■2013年12月16日


夕方単独ライブの打合せをしていると、博士から着信がある。

「もしもしガン太です。」

「もしもし水道橋、何してるの?」

「打ち合わせをしています。」

「そうか今日22時ごろからダイノジがうちに来てダンス練習するから来た方がいいよ。」

「はい行きます。」

大先輩のダイノジさんがいらっしゃるとは貴重な時間だ見学をさせて頂こうそう思って向かった。

しかし博士の"来たほうがいいよ。"という言い回しが何だか気になる・・。


倉庫には『ダイノジ』二人だけでなくDJダイノジのダンサーをしている芸人の『スベリーマーキュリー』WOWOWプラストスタッフ兼ダンサーの『森森子』(男性)とマネージャーの方も含め5人。


皆が集まると早速ミーティングが始まり大谷さんのイメージが語られていく。

大谷さんは既に自分の世界が出来上がっていて博士にやってほしいことも固まっているようだ。

「博士自身はもう14歳の時の博士で出てきてほしいんですよ。」

今回の大谷さんの求めている博士へのイメージは14歳。

博士の少年時代はとても鬱屈していて暗い14歳だった、その14歳のどん底にいた少年がそのまま明るい1万人の客の前の世界に飛び出してくるようなイメージなのだと言う。

「うん。」

博士もイメージは理解したらしいすると芸歴上で先輩の博士も負けじと自分のイメージを話し出した。

「衣装はさ何て言うか可愛いの着たいな・・メークもバッチリしたいんだ。て言うか女装したい・・」

博士は先日MXの『ニッポンダンディ』で訳あって女装して以来女装の魅力に取りつかれたらしく、理由を探しては何かにつけて女装をしようとする節があるのだ、今回もAKBの曲という事で女装がしたいという主張だが。


「そういうのはいいです!!学園祭気分とかは困るので!」

速攻却下される博士・・。

「即却下だな・・」(寂しげな表情)

「衣装は14歳中2なので学ランでお願いします。」

「じゃあセーラー服でいい?可愛いメイクとか!」

「いや!そう言うのはいいです!学ランで!そういうのじゃないので!!」

「・・ああ。」(とても残念そうな博士・・)


「それで何ですが博士には4曲踊ってほしいんですよ。」


ん?・・4曲?サラッと恐ろしい事を言い放つ大谷さん・・それはマズいあんなに簡単なステップも出来ないのに4曲何て覚えられるわけないじゃないか!

博士を見ると博士も驚いている様子。


「今回はどうしても4曲踊ってもらわないとダメなんですよね!」

話し続ける大谷さん・・ダメだ!博士!4曲は無理だとしっかり断るべきです!博士がNOと言えばまだ説得は出来るはず!

「出来ますかね?」

「いや俺のダンスの出来なさを知らないよ・・」

「簡単なので大丈夫ですよ!いけますよね!?」

「う、うん。」

完全に大谷さんペースだ!全く先輩を敬わないスタイルの大谷さんにどんどん要求を言われすべてを引き受けてしまう博士。


参ったー・・曲が4曲になってしまった・・すなわちボクも4曲覚えて博士に教えなければいけなくなったのだ・・(単独前でカツカツなのだ)


するとまた博士が大谷さんに提案をした。

「大谷君この俺の運転手のガン太も出演していい?こいつも一緒に踊っていい?」


なぬー!?ボクも出演!?そんな無茶な・・こんな何だか分からないやつが一緒に出て行っていい訳がない、この提案も即却下されるはずだ。

「いいっすよ!!」(即OK)

いや、これは良いんかい!!・・えー良いんだ・・

「良かったな!ガン太一万人の前で踊れるぞ!」

「ありがとうございます!・・やったー・・」

何だかあれよあれよの間にボクも博士と1万人の前でダンスをすることに!!

これは状況が変わってしまった・・博士に教えるためのダンスと1万人の前で踊るダンスは訳が違うちゃんと仕上げなければならなくなった。もう単独前でカツカツとか言ってられない・・。

"よーし!全部やってやらー!!!"と腹をくくった!!


その後1時間半ほどみっちりとダンスの練習をする。

専属ダンサーのスベリーマーキュリーさんはさすが教えるのも上手です。博士への指導も分かりやすい、ボクも何となく全体の振り付けを覚えたところで今日の練習は終了。


慣れない事をしてヘトヘトの様子の博士、ダイノジ2人を見送ります・・最後に大谷さんがそう言えばという感じで口を開きました。

「お疲れ様でした、ところで博士WOWOWでの漫才はいつやるんですか・・?」

このトンチンカンな質問に目を点にする博士・・

「!!それをやらない為にダンスをしてるんだっちゅうの!!!」


大先輩であるはずの博士の要求は即却下し自分の要求は遠慮なく言ってくる大谷さん。

博士も変わっているが大谷さんも相当な変わり者だ。


■2013年12月31日


カウントダウンジャパン当日12時に博士の家に到着。

「おはようございます!!やりましょう!」と早速ダンス練習!振り付けと途中少し歌う所の歌詞をまんべんなく確認。


途中卓球をしたがるたけし君(ご長男)を「俺らはダンスがあるんだ!」と一喝し練習に没頭する博士・・流石に当日はサボらない、こっちまで緊張伝わる中、1時間半ほど練習をし会場の幕張メッセへと向かいました。

入り時間は16時・・DJダイノジの出番は23時15分・・結構入りが早いです。


幕張メッセに到着し楽屋入りすると既に沢山のDJダイノジのバックダンサーが・・博士は初めてみんなと顔合わせの為"こんなにダンサーっているのかよ?"と驚いている。

本番までまだまだのはずが皆ダンスの確認プラス練習をしている。

それもそのはず聞くところによるとボクらは5曲だけだけどダンサーさんたちは23曲も踊るらしい!「多!!」これには博士と顔を見合わせ驚きました・・。


最初練習を眺めているだけでしたが『フォーチュンクッキー』が流れ出すと、

博士も"知らぬ間にリズムに合わせつま先から動き出す"とフォーチュンクッキーの歌詞通り自然に踊りだしました。

博士も熱心な方だ、フォーチュンクッキーが流れ出すと必ず踊りだす。

大体15分に1回『フォーチュンクッキー』が流れるのだがそのたびに踊りだす・・

「博士、まだ6時間くらいありますのであまり飛ばしすぎますと体がもちませんよ。」

「うん、そうだね。」

そうは言うが結局次も『フォーチュンクッキー』が流れると踊りだす博士・・顔は疲れ切っているのだが。

「博士?休んだ方がいいんじゃ・・」

「分かっている。」

「もう踊れてるんでそんなに練習しすぎるのも・・」

「うん・・」

でもやっぱり曲が流れ出すと踊りだす博士・・大丈夫かな・・と心配していると踊りながらこちらを振り返り「ダメだ!不安で踊らないでいられない!!」と一言。

・・ノイローゼじゃないか!やっぱり入りが早すぎたのです・・これだけ踊れるダンサー達が必死に練習しているところを見たら不安になるに決まっているのだ。


何か気を紛らわせられれば・・と思っているとスズキ秘書がやってきて

「『OKAMOTO'S』の時間がそろそろですが見に行きますか?」との事。

これはナイスタイミングです!息抜きをしなければ博士が持たない!

「んーどうしようかな・・練習したいな・・」とまだ練習しようとしているところを説得して『OKAMOTO'S』を見に行く事に。


さすが人気バンドで会場はほぼ満員状態、軽快な演奏に引き付けるボーカル!かっこいい!

博士もダンスの事はいったん忘れライブに見入っている・・良かった気晴らしにはなっているようです。

と最初は安心したのですが・・最初は静かに聞いてていたのだが2曲目くらいから徐々に知らぬ間にリズムに合わせつま先から動き出す博士・・どんどんリズムが大きくなり体全体が動き出した・・そして最終的にはリズムはダンスになっていき周りの目も気にせずに『OKAMOTO'S』の音楽に合わせてフォーチュンクッキーのダンスを一心不乱に踊りだしたのです!!


もう正気の沙汰ではない!何を聞いてもフォーチュンクッキーを踊ってしまう体になってしまったようだ・・結局ダンスを休みにバンドを見に来たのに練習よりも本域で踊ってしまっている博士・・そのまま5曲ほど演奏をエンドレスフォーチュンクッキーで踊りぬき会場を後にした博士。


汗だくになり息を切らしながら楽屋に戻るなり倒れこみ「マッサージしてくれ!」という、

その姿はまるですでに何かやり遂げたような程ボロボロだ・・しかし何もやり遂げてなんかない・・本番までまだまだ時間がある・・果たして博士の体はもつのであろうか?

しかもこれ全て本日の出演ノーギャラである・・何で博士がここまで追い詰められなければいけないのだ・・『大谷ノブ彦』恐るべし・・。


その後このカウントダウンジャパンの裏側にはプロのマッサージ師の居るマッサージルームがあるとの情報を仕入れたので博士に回復していただく為向かった。


そこは予想以上にしっかりしたマッサージルームでこのイベントの凄さを再確認する。

それもそのはずでこのイベントは本来芸人が出るようなイベントでは無く『エレファントカシマシ』や『きゃりーぱみゅぱみゅ』『佐野元春』『RIP SLYME』などなどの超一流アーティストが出演している音楽フェスなのだ・・。

マッサージ受付で「こちらに記入してください」と紙を出されました。

覗くとバンド名と役職を記入する欄がある・・何と書き込むのだろう?・・。

一瞬考えるそぶりを見せてソロソロと文字を書き込む博士・・。


バンド名~DJダイノジ

役職~ダンサー


マッサージ師が紙を見て"ん・?ダンサー?・・"みたいな顔を一瞬した・・

確かに黒ジャージズボンに白髪で肌着を着て腹がポッコリ出ているうえに疲れで目が虚ろな50歳過ぎのこの人がダンサーとは確かに信じがたい・・けれども事実本日限定でダンサーなのです・・。

『水道橋博士』と言う事を気が付いてくれれば話は早いのだけれども、そのマッサージ師の方は博士の事をご存じでないらしくダンサーとして質問をしてきます。

「体はどういった状況ですか?」

「全身が痛いんです。」

「全身!?何ですか?今日は特別に激しい振り付け何ですか?」

「ええ・・まあ・・慣れない物で・・激しいです・・。」

「・・慣れない?新人?・・」

「・・テーピングして欲しいんですよ。」

「あ、はい・・お普段どんな感じでテーピングしてますか?ガチガチに固める感じ?」

「ええまあ・・普段は・・あまりテーピングってのはしないんですが・・。」


こんな感じで何とも話がかみ合わない笑いを堪えるのが必死なままマッサージは終了。

いくらか回復した博士、22時半ごろにようやく楽屋入りしてきた大谷さん。

相変わらずギリギリなのにもお構いなく既にイッパイイッパイの博士に更に増えた段取りを叩きこんでいる・・。

「いいですよ、博士!そうそう!そこでそう!14歳の少年博士の鬱屈した気持ちをぶつけるんだー!!踊れ!博士えー!踊れー!!」

必死で食らいつく博士!完全にボス(大谷)と子分(博士)の構図になってしまっている!!

あっという間に本番の時間は近づきステージ横の控室に移動して円陣を組む!ボルテージも上がり気持ちが高揚してくる!!博士もキリっとした表情になっている。

舞台袖に移動し、いよいよ『DJダイノジ』の出番が来た、博士とボクは8曲目くらいに飛び出していく段取りなのでまだ舞台袖で待機。


ダイノジが舞台に現れると"ぎゃーーー!!""うをおおおお!!!"どよめく客席!?

待ってました感が凄い物凄い歓声だ・・正直ボクはびっくりした・・本来バンドのイベントであるカウントダウンジャパンでは『DJダイノジ』は完全な色物だと思っていたからだ・・

こんなに歓迎されているのか?


そして大谷さんの「DJダイノジーー始まりだーーーーー!!!!」の合図とともに大音量で音楽は流れ、"キレキレ"のダンサーが飛び出し大地さんが世界一のエアーギターを奏で大谷さんが完全に会場を支配して煽る!!


すると7000千人のお客さんが叫びながら全員踊りだした!!!


・・・その骨にまで響くような声の塊と地響き熱を全身に感じ鳥肌が立った・・。


何なんだこの世界は・・ヤバい・・こわい・・まさかこんなにスゴイとは・・

どこかナメていた部分があったのだろうはっきり言ってこんなに人気がある訳ないと思っていたし1万人近く集まると言っても何となく他のバンドの合間に集まるような感じだと思っていた何だこの熱量は・・今までに無い緊張が襲ってきた!


博士は??博士も完全に青ざめて今まで見たことがない表情になって袖から覗いている!歩くのもぎこちない程だ!!

何度か博士と目が合うが完全に二人ともどうする!?どうしよう!?の目だ・・いつも博士に頼りっぱなしのボクなので完全にパニックになった!


とにかく2人すり寄り絶対にミスれない部分を最終確認に時間を費やす!!

ボクらが飛び出していく曲が流れ始めた!!??もう吹っ切るしかない!意を決して全力で飛び出していく!!

博士は仮面を被っているのでこの段階では誰が出てきたのか客は理解していない、

一心不乱に1曲目を踊る!チマチマやると目立つのでここは大胆に練習の2倍くらいの動きの大きさで!なんか曲も練習よりメッチャ早い!!何とかついていく!


博士が付けている仮面を取り天高く投げ「水道橋博士だー!!!!」大谷さんが煽る!

"びゃああああああああ!!!!!"

その瞬間の会場の盛り上がりったらなかった!!凄かった!!

決してボクに向けられた歓声では無いのだが気持ちよくてしょうが無い!!

何が何だか分からないまま一曲目『スリップノット』の『People=Shit』が終わった・・。

「はあ、はあ、はあ、はあ・・」

緊張と興奮でペース配分も何もわからないまま踊った為この時点でほぼ体力を使い切ってしまった・・座り込みたいが何とか立つ・・博士は??と博士を見ると手を膝について"ゼエゼエ"と体を動かし顔を歪ませていた!博士の方が完全に限界だ。


しかし、容赦なく音楽は流れ続ける!!

2曲目は『マキシマムザホルモン』の『予習復讐』

この曲は途中歌う部分がある!とにかくこれを何度も繰り返し博士と移動中車で聞きまくって何度も予習復習をして覚えた!

『フォーチュンクッキー』の次に気合を入れてやっていた部分だ!歌う部分に突入した!!けど・・うっ歌えないっっ!?

手を広げ大声で歌おうとしたがもう息が上がりすぎて何にも声が出ないのです!

博士を見ると博士も口をパクパクしているだけに見える!ちきしょう!あんなにも練習したのに・・地味に悔しい思いをしながらも止まることはない!

改めて博士のMCで会場を盛り上げすぐに次の曲『星野源』の『地獄でなぜ悪い』が流れる!地獄でなぜ悪い・・自ら苦手なダンスの地獄にツッコんでいったここ数カ月の博士姿にピッタリの曲だ・・ボクも最初付き合わされるダンス地獄に戸惑ったりしていた訳だが

"ここは元から楽しい地獄"だったんだ。

『フォーチュンクッキー』が流れだした・・ほかのどの曲よりも何故この曲だけ重点的に博士が練習していたかと言うと、この曲の振りだけ極端に難しいからでした!


曲に合わせ博士が完璧に踊っています!!


それを見てボクは何だか幸せな気分になりました・・走馬灯のようにとはこういう事だ

約3週間の練習風景が頭を駆け巡る。

博士は最初こそサボり魔っぷりを発揮していたが、日が近づくにつれ毎日練習を繰り返していた。

ある程度踊れるようになった時にこんなに踊れるようになってしまっては、きちんとし過ぎで面白くないんじゃないか?という話をしていたが博士は練習を続けた。

今思うとやはりそれが大正解だった。この7000人の大舞台この雰囲気で踊りが下手で動きが変と言う種類の笑いは成立しない、博士が不器用ながらに完璧に踊るという答えしかなかった気がする。

それはそのプロセスを知らない観客にも真剣な眼差しや雰囲気で十分伝わっている気がする。

『フォーチュンクッキー』が終了し、年越しカウントダウンに突入、博士、大地さん、ダンサーの森森子さん、スベリーマーキュリーさんがバズーカを放ち年越しをした。


ボクの人生で間違いなく最高の年越しだった。


楽屋に戻ると博士は倒れこみ一点を見つめて茫然とする・・本当にこのまま死んでもおかしくない、いやむしろ逆でこの姿は自意識の殻を破った生まれたての姿なのかもしれない。


DJダイノジスタッフ、皆と別れるとき博士が「最高だった、次はツアーにも参加して全部踊りたい!!」と本気の目をして言った時、流石にDJダイノジ側ももういいよ・・という反応だったのが笑えた、もっと欲するのが流石博士です。


因みに博士は次の日からの3日間の沖縄家族旅行、筋肉痛でほぼ動けなくずっと温泉に浸かるだけで全然楽しめなかったようです。




~人は慣れる生きものです、大先輩である『水道橋博士』の運転手と言う非現実に突如身を投じることになり、気を張った毎日を送っていたボクも例外では無く、時を重ねるにつれてこの非現実に慣れていきました、慣れてくると人は小ズルい事を考えるようになってきます・・小ズルい事をしてもロクなことが無い、そんな事を学んだ一日のお話です。~


(vol.4へ続く)


■水道橋博士のメルマ旬報

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(記事提供:BOOK STAND)

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