村上春樹がカップ焼きそばの作り方を書いた場合 〈BOOKSTAND〉|AERA dot. (アエラドット)

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村上春樹がカップ焼きそばの作り方を書いた場合

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 少し前にネットで流行したウェブサービス「村上春樹風 Tweet Maker」。入力したツイートから自動的に村上春樹風の文章を生成してくれるということで、ツイッター上は"村上春樹っぽい文体"であふれかえりました。



 こんなふうに、誰かの文体を真似るという遊びは、きっと多くの人が好きなのではないでしょうか。ということで、近代から現代までの国内作家、代表的な海外の作家、歌手やエッセイストなどを取り上げて、彼らの文体を模倣した「カップ焼きそばの作り方」を紹介しているのが、神田桂一氏、菊池良氏著による本書『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』となります。その数、実に100人!



 通常、「カップ焼きそばの作り方」を考えてみると、フタをはがす→かやくやソースを取り出す→かやくを麺の上にあける→熱湯を注いで3分待つ→お湯を捨ててソースを混ぜ合わせる、という手順が基本です。ところが、本書に出てくるカップ焼きそばの作り方といったら! ここまで百人百様にフリーダムな表現ができるのかととても驚かされます。それでいて、そのどれもが「〇〇が書いたみたい!」と言わざるを得ません。



 たとえば村上春樹であれば、始まりは「きみがカップ焼きそばを作ろうとしている事実について、僕は何も興味を持っていないし、何かを言う権利もない。」という一文から。誰が読んでも「村上春樹っぽい!」と一目瞭然です。紀貫之であれば「男のすなるかっぷ焼きそばというものを、女もしてみむとてするなり。」だし、星野源であれば「カップ焼きそばが嫌いである。そもそもあれは焼きそばではないと僕は思っている。だって炒めてないんだもの。」。星新一であればもちろん、「エヌ氏」が出てきて不思議そうな「箱」が登場するわけです。



 中には作家やタレント以外のケースも。文春砲でおなじみの『週刊文春』であれば、「一月下旬。西新井のアパートの一室から、マスクをした男が出てくる。男は警戒するように周りを見ながら、近くのコンビニへと入っていった。」だったり、女性向け自己啓発エッセイであれば「女性なら誰でも、男性から『きれい』『かわいい』と言われるようなカップ焼きそば作りをしたいものですよね」だったり。



 どうでしょう。たかがカップ焼きそばの作り方ひとつなのに、ここまでさまざまな表現方法があるとは......! 興味を持った皆さんはぜひ本書をめくりながら、一つひとつじっくりと味わって読み比べてみてください。



 ちなみにイラストは、手塚治虫など有名漫画家のパロディを得意とするマンガ家・田中圭一さんによる描き下ろし。「もし手塚治虫が太宰治を描いたら」「もし藤子・F・不二雄が三島由紀夫を描いたら」などの設定となっていて、こちらも必見です。


(記事提供:BOOK STAND)

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