珈琲、紅茶、クリームソーダー、ミックスジュース......。喫茶店を訪れ、必ず頼む定番の一品、あるいは、ついつい頼んでしまうメニューはあるでしょうか。漫画家・文筆家として活躍する能町みね子さんは、子どもの頃から"ミルクセーキ"が大好きだといいます。


 先月、上梓した『きまぐれミルクセ〜キ』では、能町さんの溢れんばかりのミルクセーキ愛が爆発。


「喫茶店のメニューで私が子供のころから好きなのは、ミルクセーキです。甘ったるさ。卵のまろやかさ。温めても冷やしてもイケる、やわらかい乳白色の優しい飲みもの。シェイクではなく『セーキ』という、古めかしい響き。ああ、大好き!」(本書より)


 元々は"エッグノック"という名のカクテルだったというミルクセーキ。卵黄と牛乳、砂糖を混ぜ、ブランデーやラム酒が入ったクリスマスに飲まれるイギリス生まれのカクテル・エッグノック。ミルクセーキは、その子供用の、アルコールの入らないものなのだといいます。


 本書では、東京そして全国各地で能町さんが訪れた喫茶店のミルクセーキを紹介。それも喫茶店自体に年季が入っており、「こぢんまりとしていて窓は少なく、あるいは小さく、照明も控えめで店内は暗め。木の壁には積年のタバコのヤニがこびりつき、店内を色で表すなら飴色から焦げ茶色。ポップというよりはクラシックな雰囲気」(本書より)を持つ、いわゆる純喫茶のミルクセーキが紹介されていきます。


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