JR新宿駅の東口を出て、靖国通りを渡り"四季の路"という名の遊歩道を直進すると広がる、約280軒もの店が密集する"新宿ゴールデン街"。一体どのような世界が繰り広げられているのか、足を踏み入れてみたいものの、一軒一軒が醸し出すディープな雰囲気に圧倒され、なかなか最初の一歩を踏み出せない方も多いのではないでしょうか。



 そんな方にオススメの一冊『いまこそ行きたい! 新宿ゴールデン街』。本書では、ゴールデン街を愛する著名人たちが、行きつけのお店や気になるお店を紹介。またゴールデン街にある店舗の内218軒について、それぞれどのような特徴を持っているのか一軒一軒説明がなされており、初めて訪れる際の参考にもなるはず。



 今や外国人観光客も訪れる新宿ゴールデン街ですが、そもそもそのルーツは戦後の闇市。1950年頃にまで、歴史は遡るといいます。



「敗戦の混乱期、新宿駅東側には闇市『竜宮マート』が栄えていたが、49年にGHQが露店商の撤廃を指示。東京都と警視庁は、屋台の撤去と移転を命じた。闇市の人たちは抵抗を試みるも、結果は空しく移転することに。その移転先が、後に"新宿ゴールデン街"と呼ばれる、三光町一帯だった」(本書より)



 そして、1965 年頃には、映画・演劇関係者や小説家といった文化人たちが夜な夜な集まる場に。1976年頃には、ゴールデン街の常連作家たちが次々と文学賞を受賞したことにより、広く注目を集めたのだといいます。



「76年、街の常連だった作家の佐木隆三が直木賞、中上健次が芥川賞の受賞者に決定。『ゴールデン街からスター誕生』と大々的にマスコミで取り上げられ、街は一躍脚光を浴びた。『文化人たるもの、ゴールデン街に馴染みの店を持つことは必須』とのイメージが定着したのもこの頃」(本書より)



 ゴールデン街は、現在もなお文化人たちに愛されており、「とくに思い入れがあるわけでも何でもないんだけどなぜか来てしまう」と本書のなかで述べるのは、作家・音楽家である中原昌也さん。またお客としてだけでなく、俳優の黒田勇樹さんや、タレントの坂本ちゃんなど、ゴールデン街で働いている役者や芸人たちもいるといいます。



 なぜゴールデン街は人を惹きつけるのか、そこにはどのような魅力があるのか。気になる方は是非、実際にいくつかお店を訪れてみてはいかがでしょうか。気づけばその魅力にハマり、中原さんのように「なぜか来てしまう」という状態になっているかもしれません。