「オダサク」の愛称で親しまれた織田作之助は、大阪を舞台に市井の人々の人間模様を描いた作家です。代表作『夫婦善哉』は昭和の大阪を代表する作品として、今でも語り継がれています。



  1955年には森繁久彌と淡島千景主演によって映画化されていますが、この度8月24日午後9時よりNHK・総合にて、森山未來と尾野真千子主演のドラマが放映されます。



 本作には、「高津の湯豆腐屋、下は夜店のドテ焼、粕饅頭から、戎橋筋そごう横『しる市』のどじょう汁と鯨じる、道頓堀相合橋々詰『出雲屋』のまむし、日本橋『たこ梅』のたこ、法善寺境内『正弁丹吾亭』の関東煮、千日前常盤座横『寿司捨』の鉄火巻と鯛の皮の酢味噌、その向い『だるまや』のかやく飯と粕じる」といったように、大阪の食べ物屋が数多く登場します。大阪・千日前を歩いていると、カレーの自由軒や、ラストシーンに登場しタイトルにもなっている「夫婦善哉」をはじめとするお店には、今でも織田作之助の名が見受けられます。



「柳吉は「どや、なんぞ、う、う、うまいもん食いに行こか」と蝶子を誘った。法善寺境内の「めおとぜんざい」へ行った。道頓堀からの通路と千日前からの通路の角に当っているところに古びた阿多福人形が据えられ、その前に「めおとぜんざい」と書いた赤い大提灯がぶら下っているのを見ると、しみじみと夫婦で行く店らしかった。おまけに、ぜんざいを注文すると、女夫の意味で一人に二杯ずつ持って来た。」



 今なお大阪の中に息づいている『夫婦善哉』ですが、本書ではこの『夫婦善哉』『続夫婦善哉』に加えて、織田作之助の直筆原稿が収録されています。 NHKドラマを見る前に、原作を手にとり直筆原稿を読みながら、当時の大阪の空気や人間模様を感じてみてはいかがでしょうか。