司法に対しては、黒川弘務検事長(当時)の定年延長問題も起きました。過去の自民党は、権力を持っていても司法に対して一線を越えることはなかった。だから、田中角栄さんでも逮捕されたんです。三権分立の尊厳に、時の権力は触れてはいけません。それが今の自民党では、言葉に責任を持たず、傲岸不遜に政治をやっている。その結果、役人も萎縮して政治家に意見しなくなりました。

 外交や防衛政策もその場しのぎの対応ばかりです。安倍前首相は「戦後外交の総決算」と言い始め、北方領土問題では4島一括返還の原則を2島返還にしてしまった。それに対して誰も「おかしい」とは言わない。

 昔の自民党なら、党内で活発な議論をしていた。米価問題では、徹夜で議論しましたよ。それだけ議論をすると、みんな疲れてしまって「もういいからまとめてくれ」となるわけです。そこでまとまった結論というのは、全体の意見の落としどころにおさまっていく。でも、その決定というのは、大きくズレてはいない。

 ところが、今は形だけの議論しかしない。最初から官邸で物事が決定していて、自民党は追認するだけになってしまった。安倍前首相が桜を見る会問題で118回も国会でウソをついても、党で何の問題にもならない。やりたい放題です。

──変えるには、どうすればいいのでしょうか。

 前回衆院選の小選挙区(定数289)で立憲、希望、共産、社民と野党系無所属議員が得た議席は60。全体の20.7%しかありません。議会は数です。小選挙区で79.3%の議席を持つ与党に立ち向かうのは、今の野党ではとてもできません。だから与党はやりたい放題で、結果的に自民党の質も劣化してしまった。

 ですが、前回衆院選で野党が選挙協力をしていれば、維新の会の票を含めなくても、単純計算で小選挙区で102議席を獲得することができた。まずは、これが次の衆院選の目標です。102議席に比例の議席を含めると、野党は200議席を得ることができる。そうすれば、野党の議席数は国会の43%で、保革伯仲です。

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「政権交代」は言わない理由