撮影/写真映像部・上田泰世
撮影/写真映像部・上田泰世

永江:一方で、初版部数が減って、返品が早い。一冊の平均店頭滞在時間が1週間と聞いたことがあります。

斎藤:次々と本が書店に来るので、2、3カ月寝かせておくことができない、ということですかね。書店のいいところは、こんな本があるんだとサプライズの本を発見する楽しみですね。散歩の効用みたいなところがある。

永江:リアル書店はいっときヘイト本がはやって、行きたくなくなったときがありました。

斎藤:一時に比べたら減りましたけどね。

永江:週刊誌書評と新聞書評の違い、という問題もありますね。

斎藤:新聞の書評は難解なのもありますよね。専門分野の本は専門家が書くのが原則だけど、それだけだとつまらない。科学者が文芸書を書評するとかの意外性が欲しい。書評にはジャーナリスティックなセンスがいるんだと思うんです。

永江:ぼくの仮説なのですが、週刊朝日に限らず、あらゆる書評欄は、その媒体が理想とする読者に向けている。現実にそうかどうかは別にして。朝日新聞なら、こういう書評欄を望むような人に朝日新聞を読んでもらいたいと。

斎藤:そんなにちゃんと考えていますか(笑)。

永江:ぼくは週刊朝日を書くときは、ある時期からひらがなの「ぼく」にした。じつは30代、40代のときから、いい年をして「僕」はないだろうと感じていた。還暦過ぎたら、そこは……。

斎藤:じじいならではの「ぼく」ね(笑)。

永江:もう全部さらけ出しましょうと。

斎藤:80年代、私は児童書の編集者や週刊誌のデータマンをやっていたんだけど、その頃、女性週刊誌はゴシップ雑誌なわけですよね。ところが、どんな週刊誌も書評欄だけレベルが高いわけです。なぜかというと、もともとみんな本が好きで出版社に入社している。だから女性週刊誌に配属されても、ちょっとぐらいむずかしくてもいい本を紹介したくなる。どんな媒体であれ、書評欄はオアシスというか聖地となっているのですね。

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