とら婚事業室の正井さん(左)、とら婚コネクトスタッフの頓宮知佳さん(右)
正井さんはアニメ・漫画・建築デザイン、頓宮さんは「2・5次元」と呼ばれる舞台俳優や声優に詳しい
とら婚事業室の正井さん(左)、とら婚コネクトスタッフの頓宮知佳さん(右) 正井さんはアニメ・漫画・建築デザイン、頓宮さんは「2・5次元」と呼ばれる舞台俳優や声優に詳しい

「オタク」というと異性とのコミュニケーションに疎く、恋愛が不得手なイメージが先行しがちだ。しかし近年は専門の結婚相談所も登場し、近い趣味を持つ者同士が出会えるようになって状況が変わりつつある。当事者たちが語る、「オタク婚」ならではの魅力とはーー。

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「コスプレ趣味を告白したとき、『そうなんだ、現役でやってたとしても何も引かないよ』と言ってくれたのが現在の夫だったんです。その時に、ああ、この人となら一緒に暮らしていけると思いました」

 こう話すのは、関東の一般企業で事務職として働くナナさん(仮名、41)。ナナさんには結婚前まで、家族も知らないもう一つの「顔」があった。コスプレイヤーだ。開眼のきっかけは、バイト先にオタクの女性がいたこと。「洋服も作れる子で、コスプレという世界を教えてもらって。全身を使って作品を表現するのがすごく面白い」とのめり込んで行ったという。

 一方、周囲にはそのことをなかなか打ち明けられずにいた。30代に入り、結婚を意識するようになったナナさんは「生涯一緒にいる相手に、自分を押さえて付き合うのはしんどい。趣味に理解のある男性と出会いたい」と、「とら婚」というオタク専門の結婚相談所に登録する。

 同相談所を運営しているのは、同人誌ショップで知られる「とらのあな」をグループ企業に持つとら婚株式会社。特徴は、入会者もアドバイザーも両者ともに「オタク」であることだ。入会時にはアドバイザーが入会者からアニメ、マンガ、ゲームなど趣味について詳しくヒアリングし、年齢・職業などのプロフィール項目と一緒に専用の検索システムに登録。会員は自分で相手を検索したり、アドバイザーから他の登録者の紹介を受けられ、気になる相手がいればお見合いを申し込むという仕組みだ。

 紹介を受けた中でナナさんが気になったのが、IT企業に勤めるアニメ好きの男性、タカシさん(仮名、40)だった。自身から申し込みを送り、秋葉原の喫茶店で対面。趣味や仕事の話で盛り上がった。

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夫婦で互いに部屋を開けっぱなしに