古賀茂明氏
古賀茂明氏
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 2023年4月、政府は大阪府と市が申請した I R (カジノを含む統合型リゾート)の整備計画を正式認定した。大阪市の夢洲に1兆円超を投じ29年に開業。来場者は年間二千万人、年間売り上げ約五千二百億円で9万人超の雇用を生み出すというが、どうも眉唾だ。

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 事業者には1円も払わないと約束した松井一郎前知事は、建設予定地の土壌汚染対策費として790億円もの大金を事業者に搾り取られて大損失。大嘘つきと批判された。

 計画数字の水増しも心配の種だ。当初の基本構想では、I R全体の利用者が年間延べ2480万人、カジノ利用者が590万人だったが、いつの間にか全体の利用者が1987万人と減少したのにカジノ利用者は逆に2.7倍の1610万人に激増する計画になった。I R全体の収益の8割、約4200億円をカジノで稼ぐ計算なので、水増しが必要なのだろう。だが、この収益を実現するには、全てのスロットマシン、テーブル・ゲームを満席にして24時間フル営業で1日4回転を365日続けることが必要というから、いかに無理しているかがわかる。計画達成には相当悪どい商売をせざるを得ない。

 そこで心配なのが、ギャンブル依存症の被害だ。政府は、日本人には六千円の入場料を払わせるというが、それを相殺するクーポンなどを渡せば効果はなくなる。

 さらに、カジノ入場を週3日、月に10日以内にする規制も導入されるが、これも実はザル規制でしかない。それは1日を24時間でカウントすることによる。例えば、月曜午後5時から火曜午後5時まで24時間カジノに滞在。その後、カジノの近くのホテルにもらった宿泊クーポン券で1泊して、水曜の昼頃に起きて腹ごしらえをし、午後5時から翌木曜日の午後5時までカジノに滞在。同じことをもう一度繰り返して、金曜、土曜と滞在すれば、週6日になるが、法律上は3日のカウントだ。

 これを3週繰り返して、18日カジノに入り浸り、さらに残った1日分で二日滞在すれば、結局月に20日になる。これでカジノが日本人をカモにして4千億円稼げば、国民は4千億円損をすることになる。

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「港で賭博はやらせない」信念を貫いた「ハマのドン」