ブランシャーさんは、気候市民会議について学ぶため、昨年8月にパリに行き、運営メンバーの話を聞いた。そこで学んだのは、ていねいに議論することの大切さだ。それを日本でも広げていきたいと考えている。

「選挙で大事なのは、投票に行くまでの過程だと私は思っています。オトナカフェもその一つ。いろんな人と政策課題について議論をして、誰に投票するかを決める。『選挙っておもしろい』と感じてもらって、投票した後も政治に関心を持ち続けてほしい」(ブランシャーさん)

■政治家支援の新しい動きも

 政治家を支援するネットワークづくりを模索する動きもある。

 24年度に改正が予定されている介護保険法について、現在政府内で議論が始まっている。そこでは介護サービスを利用した際の自己負担割合が2割(現行は原則1割)になる対象者を拡大することなどが議論されている。

 これに異を唱えたのが、若者時代に国家権力と闘った団塊世代のグループ「アクション『介護と地域』」だ。事務局長の前田和男さん(ノンフィクション作家)はこう話す。

「今回の介護保険法改正の問題を広く知ってもらい、また、高齢化する日本の社会のあり方を考えてくれる政治家を一人でも二人でも増やしたい。組織を作ったといっても、我々が選挙に出るわけではありません。地域から日本の介護を考える運動をしていきたい」

 支援を受ける一人である東京都の佐藤司さんは、れいわ新選組公認で北区議選(4月23日投開票)に出馬する予定だ。自身も介護事業所を経営し、北区の介護保険行政に疑問を呈する。

「高齢者の生活支援などを市町村が展開する総合事業について、北区の報酬は特に低い。事業者の経営は厳しく、このままでは北区内の約6500人の要支援者の介護サービスが低下して、介護難民が増えます。3年ごとに、上がり続ける介護保険料も問題だと考えています」

 地方自治は、「民主主義の学校」と言われる。これまでの政党任せ、現職有利、選挙戦では選挙カーで叫ぶだけの政治から、民主主義を自分たちの手に取り戻す。日本を変えるには、まずは足元から。熱い戦いはすでに始まっている。(西岡千史)

週刊朝日  2023年4月7日号