
この年末年始、東京・池袋駅のイベントスペースに昔ながらの伝言板が設置され、多くの人々が立ち止まり、思い思いのメッセージを書き込んだ。ネットが発達したこの時代に、アナログな伝言ツールが注目されたのはなぜか?
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50代以上の人なら誰でも目にしたことはあるだろう。駅の「伝言板」。携帯電話が普及する前には改札口付近に設置されていた。遅れてくる待ち合わせ相手に「先に行っている」とか、「1時間待った。いつもの喫茶店で待つ」など、待ち合わせのためのツールとして利用された。
しかし、誰もが携帯電話を持つ時代になり、伝言板はその役割を終え、次第に姿を消していった。ところが“過去の遺物”ともいえる伝言板が、この年末年始に池袋駅に設置されるや、わずか1週間の設置期間に1千件を超える書き込みがされたという。
「いつもおいしいごはん、ありがとう!」
「また遊ぼうね! お泊りしたいね(ハートマーク)」
「事業部の皆さん、年末にリフレッシュして来年も頑張りましょう」
伝言板を埋め尽くしたメッセージのほとんどは、感謝や願いごとを記した言葉だった。
伝言板の“復活”を企画した「PR TIMES」の担当者はイベントの狙いについて、「時代が変わっても人と人をつなぐ“伝える”という行為には温(ぬく)もりがあることを感じてほしかった」と話す。
「家族や友人、会社の同僚に向けて感謝の思いを伝える書き込みが多かったです。口頭で伝えるのはなんとなく気恥ずかしいことも、伝言板でなら伝えられるということかもしれません。メールやLINEとは違い、瞬時に届くことがないメッセージになりますが、手書きだと、思いが肌で実感できることを改めて知ったと言ってくださった方もいました」
伝言板を知らない世代も多く利用してくれたという。
「小さなお子さんが“ママ、だいすき”と書いたり、Z世代の若者が“推し”への思いを綴ったり。子供に伝言板が当たり前だった時代のことを教えているお父さんもいました。自分が書いたメッセージをスマホで撮影して、SNSにアップしている若い女性たちもいて、若い世代にも伝えることの温もりは実感していただけたのではないかと考えています」