年末年始に池袋駅に設置された伝言板と書き込む人
年末年始に池袋駅に設置された伝言板と書き込む人

 同社では、池袋でのイベントと同時期に、「帰省してくるあなたに」というテーマでメッセージを公募し、集まった手書きのメッセージをそのまま伝言板に映したポスターを47種類作り、47都道府県の主要駅に掲示した。こちらにも「息子へ あなたの笑顔が一番のお土産です」「たまには帰っておいでよ。兄貴はいつでもここで待ってる」など、心温まるメッセージが多数寄せられたという。

 鉄道ジャーナリストの枝久保達也氏によると、駅に伝言板が設置されるようになったのは明治後期の20世紀初頭だという。

「自動車交通が発達する以前は、鉄道は人、モノ、情報の中心地でした。自然と待ち合わせ場所としても利用された。そんな利用者たちのための鉄道会社によるサービスとして利用された伝言板でしたが、平成期に入って携帯電話が普及していくとともに、伝言板は使われなくなっていき、いたずら書きされるくらいしか利用されなくなっていきます」(枝久保氏)

 平成初期には東京の地下鉄駅では書き込みの9割がいたずら書きという状態になり、利用者で混雑するターミナル駅では、通行の邪魔になるという理由で徐々に伝言板が撤去されていった。2011年の東日本大震災で通信インフラが打撃を受けた際には、市役所などの伝言ボードに多くの手書きメッセージが貼り出され、災害時の伝言ツールとして見直されたが、伝言板として復活することはなかった。

 とはいえ伝言板はこの世から消えてしまったわけではない。たとえば、20年には短い期間に限られるがJR東神奈川駅(京浜東北線)に、21年にはJR蘇我駅(京葉線)に設置されたことがある。

 若手駅員の「コロナ禍で、駅の利用者を少しでも元気づけたい」という思いで、約2カ月間、伝言板を置いた東神奈川駅では「コロナに負けない」「頑張ろう!」「ライブに行きたい」などのメッセージが1千件近く寄せられたという。

 黒板にチョークで書き込むという昔ながらの伝言板とは違い、デジタル技術を使った現代版の伝言板もある。

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